日本海の“原発銀座”どう護る? 新巡視船「わかさ」海保へ 運用する“海の機動隊” とは

海上デモやテロに警戒「特警隊」って?

 海上保安庁は現在、国土強靭化や防災・減災への取り組みとして、緊急時の対応能力を向上させるため巡視船艇の整備を推進しています。

 今回、引き渡された「わかさ」は、2016年に決まった「海上保安体制強化に関する方針」に基づき、2019年度補正予算で建造されたもので、船価は約72億円。原発などへのテロの脅威や、大和堆(日本海中央部の海底地形)周辺で違法操業を行う北朝鮮漁船への対処といった重要事案が発生した場合に駆けつける、警備実施等強化巡視船(特警船)に位置づけられており、特別警備隊(特警隊)の運用を行うための設備も用意されています。

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新造巡視船「わかさ」の引き渡し式の様子(深水千翔撮影)。

 特別警備隊とは、違法・過激な集団による海上デモや危険・悪質な事案、テロ警戒などに対応するため、指定された巡視船の乗組員によって編成される「海の機動隊」です。

 たとえば不法行為を行っている小型船が警告に従わず逃走しようとした場合は、「わかさ」に搭載している複合型ゴムボート2隻に特警隊員が乗り込んで追跡し、挟み込んで強制的に停船させた後、移乗して容疑者の確保を行います。

 出動時はヘルメットや防刃チョッキ、プロテクターなどを着用。状況によっては投石や火炎瓶の投擲、銃火器による抵抗も考えられるため、大盾の操法や犯人を確保する上で必要な格闘術なども身に着けています。ゆえに「わかさ」には、こうした訓練を行うスペースも用意されているそうです。

 海上保安庁長官の訓示を代読した海上保安庁警備救難部長の渡邉保範部長は次のように述べました。

「『わかさ』は、遠方海域における不審事象や不法行為への対応のほか、若狭湾内に多数所在する原子力発電所などの重要臨海施設の警戒警備を強化するために建造された。日々研鑽を重ねた『わかさ』特警隊が乗船し、高度な規制能力や捜索監視能力などを備えた本船をもってすれば国民の安心、安全に大きく寄与できるものと確信している」

 なお、2月9日には岡山県玉野市の三菱重工マリタイムシステムズで、「わかさ」と同型の「はてるま」が進水しています。同船はくにさき型巡視船の22番船で今年(2023年)中の就役が予定されています。さらに、尖閣領海警備体制の強化を目的として2021年度補正予算でも23番船が予算化されていることから、同型船の増備は今後も続く模様です。

【了】

【普段入れない船橋やOIC室も】新造巡視船「わかさ」を外も中もイッキ見!

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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