MotoGPの“忌み番”?「ゼッケン1」が11年ぶりに復活 栄光のナンバーのはずがなぜ避けられる
「ゼッケン1」ではチャンピオン防衛ができない?
ロッシが「ゼッケン46」で5連覇を果たしたことは、「ゼッケン1」を特別視する従来の見方を覆し、代わって固定ゼッケンを特別視する風潮につながりました。同時に、ゼッケンはライダーの自由意志によるもの、というイメージが強まっていきます。
そんな流れが定着した中で、ロッシを2007年に破ってチャンピオンとなったニッキー・ヘイデン(ホンダ)が、翌2008年シーズンに、過去のレギュレーションを再現するかのように、「ゼッケン1」を選択しました。ここに来て、再び「ゼッケン1」への特別視がよみがえります。その後、2008年のケーシー・ストーナー(ドゥカティ)、2011年のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)、2012年のケーシー・ストーナー(ホンダ)らのチャンピオンが、勝利の翌シーズンに「ゼッケン1」を選択しました。
ただ、上記の「ゼッケン1」をつけたライダーたちは皆ことごとく、チャンピオン防衛に失敗します。このことによって、再び価値が上昇したかに見えた「ゼッケン1」には、逆にマイナスのイメージがつきまとうようになります。
そういったことから、2012年シーズンのストーナー以降は、「ゼッケン1」を背負うライダーは登場しなくなります。過去に「ゼッケン1」を選択したことのあるロレンソは、「ゼッケン1」をつけないで2012年と2015年にチャンピオンを獲得し、チャンピオンを防衛できなかったシーズンにも「ゼッケン1」をつけていませんでした。
また、2021年シーズンのジョアン・ミル(スズキ)、2022年シーズンのファビオ・クアルタルロ(ヤマハ)は固定ゼッケンを通したものの、チャンピオンを防衛できませんでした。こうして、もはやゼッケンとチャンピオンにかかわるジンクスは意味のないものとなり、ライダーやファンの意識から「ゼッケン1」の特別なイメージは消えていきました。
そうしたなか、2022年シーズンのチャンピオン、フランチェスコ・バニャイア(ドゥカティ)が2023年シーズンに「ゼッケン1」を選んだことは新鮮な出来事として迎えられています。前年度チャンピオンが「ゼッケン1」を選んだのは2012年のストーナー以来11年ぶりと。ゼッケンとチャンピオン防衛にまつわるジンクスは薄れたとはいえ、ネガティブなイメージがかつて存在した「ゼッケン1」は、選択することに勇気が必要なはずです。しかし、バニャイアはあえて自分の意思でこれを背負うことにしました。
もはや敬遠されてきた「ゼッケン1」ですが、もしかすると今シーズン以降、新たな「ゼッケン1」の伝説が形作られていくのかもしれません。
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