魚河岸の顔「ターレットトラック」のナゾ 実は名前すら曖昧? 何度もプラモ化されてきた“魅力”
では「ターレット」とは…?
もう1種類、アオシマがプラモデル化している「ターレット」とは、2012年に破産した朝霞製作所が生産していた「ターレットトラック」の略称で、この名称は同社がなくなるまでは登録商標だったそうです。本稿では便宜的に、海洋堂のキットにならって、この手の車両を「ターレットトラック」と書いてきましたが、それはもともとは特定メーカー、しかも倒産した会社の登録商標だったわけです(朝霞製作所の破産後は、この名称が一般的な呼称となっています)。
では、海洋堂の「ARTPLA 飼育員とシロサイセット」に入っている「ターレットトラック」は、どこの「ターレットトラック」なのかを確認してみます。ヘッドライトの位置、円筒を縦方向に走るパネルラインからして、どうやら朝霞製作所の本家(?)「ターレットトラック」を参考にしたのは間違いないようです。ただし、ハンドルの付く上端部のユニットは大きめにアレンジしてあったりと、イメージ重視でプラモデル化されていると見るのが正しいようです。
戦車、飛行機、艦船など、プラモデル化に値する乗り物には、その背後にそれぞれの歴史や物語、蘊蓄があるものです。プラモデルのユーザーはそういった乗り物の背景に思いをはせながら組み立てを楽しみ、眺めて悦に入ります。件の乗り物、「ターレットトラック」は、乗り物の種別としての一般名称があやふやなほどマイナーな存在ですが、よくよく調べてみれば、それなりに多彩で深みを感じさせるものでした。プラモデルメーカーはそのあたりに着目して、新たなモチーフとしてこの「ターレットトラック」を選んだとも考えられます。
現在、アオシマの「1/32 特殊荷役シリーズ」は生産休止中なので、いま手に入る「ターレットトラック」のプラモデルは、海洋堂の「ARTPLA 飼育員とシロサイセット」にセットされているもののみです。このキットを改造して、ありし日の朝霞製作所の「ターレットトラック」を徹底再現してみたり、というのも、プラモデル本来の楽しみ方といえるでしょう。
【了】
Writer: 廣田恵介(プロライター)
プラモデル業界、アニメ業界を積極的に取材するプロライター。『ホビージャパン ヴィンテージ』の巻頭特集を構成・執筆。著書に『我々は如何にして美少女のパンツをプラモの金型に彫りこんできたか』『親子で楽しむ かんたんプラモデル』など。
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