翼ついた宅配便の箱?いいえ“無人機”です 戦場への新補給手段「使い捨てグライダー」のナルホドな実力
使うのはあくまでも特殊部隊に限定
日本でもドローンを活用した小ロット配送の検討が進められていますが、GD-2000は軍用のなかでもより特殊な用途で使われることを想定している模様です。今回のテストを実施したのが特殊作戦部隊という点からも、その一端が垣間見られます。
軍隊における補給活動は、通常であれば補給を担当する部隊によって行われます。しかし、敵地の奥深くで活動することも想定される特殊部隊に関しては、そこへ味方の一般部隊が補給のために赴くのは極めて危険であり、むしろ補給部隊が多大な損害を被る可能性の方が高い場合も想定されます。
アメリカ軍では現在、空中から補給品を届けるひとつの方法として「ジョイント・プレシジョン・エアドロップ・システム (JPADS)」と呼ばれる物資空中投下システムを運用しています。これはパラシュートと誘導装置を組み合わせたものですが、パラシュート投下という特性上、落下地点の精度が低く、かつ敵地においては発見される可能性が高いという問題も含んでいました。
今回、試験されたGD-2000はそういったJPADSの欠点を改善した補給方法になります。元々はアメリカ海兵隊の要請で開発されたものだそうですが、無人グライダーのため、誘導によって正確に目標へ到着するだけでなく、JPADSよりも遠距離へのデリバリーが可能なうえに、運用コストの面でも半分程度になるといいます。
GD-2000は、通常の補給部隊の輸送手段としては高コストで、かつ輸送量も少ないため、多用するのは難しいでしょうが、特殊作戦のような特別な環境下では、数少ない安全な輸送・補給手段として活用される可能性も秘めています。
なお、この試験に合わせて発表されたリリースでは、離島地域への輸送能力にも触れられていたことから、日本を含めたインド太平洋地域での運用も視野に入っているようです。ひょっとしたら、近い将来、日米共同演習などでも見かけるようになるかもしれません。
【了】
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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