旧日本海軍「最速の駆逐艦」トップ3とは? 1位と2位は“親子” 世界最速記録には異議アリ?
旧日本海軍3番目の速さを誇る艦艇の名は?
このように新旧「島風」は、旧海軍艦では1番と2番に輝く快速性を有していたのですが、では、この2隻に継ぐ韋駄天艦となると、なんだったのでしょうか。
それは初代「島風」の姉妹艦である、嶺風型駆逐艦5番艦「灘風」です。同艦は1921(大正10)年に行われた公試において、機関出力4万511馬力で39.806ノット(約74km/h)を計測しており、当時は初代「島風」に継ぐ高速記録でした。
興味深いのは、初代「島風」が軸出力4万652馬力で40.698ノット(約75 km/h)を達成したのに対して、同型2番艦の「沢風」は、同4万2742馬力と上回る出力を発揮していながら、速力については38.126ノット(約71km/h)と、かなり下回っていたことです。
理由は判然としないものの、それ以外でも同型6番館「矢風」が4万2638馬力で38.14ノット(約71km/h)とばらついています。しかし、これが昭和以降になると、同型艦でのばらつきが少なくなることから、おそらく凌波性の改善が速力を安定させたのではないでしょうか。
ちなみに、世界の駆逐艦最速記録を持つのは、フランス大型駆逐艦「ル・テリブル」で、基準排水量で45.02ノット(約83km/h)を達成しています。ただ「基準排水量」とは、満載状態から、燃料と予備缶水(水)の重量を差し引いた状態、つまり「ほぼ燃料ゼロの状態」ですから、記録を出すために環境を整えたとも言えます。実際、通常状態での「ル・テリブル」の最高速力は37ノット(約69km/h)です。
なお、冒頭に述べたように第2次世界大戦以降、ミサイルなどが登場したことなどにより、大型水上艦は過度な高速性が求められなくなっています。ただ、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の不審船対策において、海上自衛隊のはやぶさ型ミサイル艇は“44ノット(約82km/h)の最大速力が発揮できる”などと喧伝されているため、現代でも用途によっては超高速が求められることがある模様です。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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