大失敗! 戦艦の「2段重ね砲塔」が机上の空論だったワケ アメリカだけが懲りなかった

米海軍が考えた2段式砲塔のメリット

 主砲塔の上に中間砲塔を載せれば、その分、甲板上で中間砲塔が占めていた設置面積を削減できることになります。しかも、主砲用と中間砲用の弾薬の供給については、艦内を弾薬が通るルートが同じ主砲塔経由になるうえ、両方の弾薬庫を隣接して設置し、まとめて防御することで、弾薬庫の艦内容積と装甲防御を集約化できます。また、砲塔とその関連設備を集約することで全体重量を浮かし、その浮いた重量を全体装甲に回せるというメリットまでありました。

 もちろん、当時の技術では旋回砲塔の上にもうひとつの旋回砲塔を載せて、それぞれを別々の方向に指向させることは困難でした。

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戦艦「キアサージ」の2段式砲塔(画像:アメリカ海軍)。

 しかし前述したように、撃ちながら敵艦へ近づいて行く当時の海戦スタイルなら「まず射距離がいちばん長い主砲で砲撃→距離が近づいたらこれに中間砲の砲撃が加わる→さらに近づけば副砲も砲撃を加える」という流れになるので、弾道の違いによる俯仰角(砲身の上下)さえとることができれば、大小の砲塔が上下あったとしても、あまり問題にはなりませんでした。結果、両砲が同じ方向しか指向できないことは、大きな問題ではないと結論付けられたのです。

 さらに、主砲と中間砲では装填速度が異なり、中間砲のほうが早く装填できるので、主砲の装填中の時間を利用して、中間砲を別の目標に向けて撃てるとまで考えられました。

 当時の戦艦の標準的な主砲の搭載方法は、艦首側と艦尾側にそれぞれ連装砲塔1基ずつを備えるというもので、キアサージ級も同様でした。そこでアメリカ海軍は、13インチ主砲が収められた連装主砲塔の上に、8インチ砲が収められた連装中間砲塔を設置します。

 しかし、結果はアメリカ海軍が考えていたようにはいきませんでした。うまくいくと考えていたことが、ほぼ全て「机上の空論」であることに気づかされたのです。

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