「いずも」が旅に出る理由 インド太平洋への展開で見せる日本の“姿勢” 注目度は実際高い?

日本の「空母」来る!

 他でもなくいずも型ヘリコプター搭載護衛艦が、6年連続で日本の近海を離れてインド太平洋方面に長期展開する理由。それは、インド太平洋方面の国々に、日本がこの地域を重視し、地域の安定に責任を負う事を示すためであると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

 日本政府は2018年12月、必要に応じて航空自衛隊のF-35B戦闘機をいずも型に搭載することを決定し、いずも型を「空母」とするための改修作業を進めています。

 2019年のインド太平洋派遣訓練に参加した「いずも」は、同年5月にシンガポールで開催された海洋防衛装備展示会「IMDEX ASIA 2019」で一般公開されました。筆者はこの取材を行いましたが、約半年前に空母化が発表された事もあって、参加者の「いずも」に対する注目度は高かったように記憶しています。

 IMDEX ASIA2019にはベトナム海軍のゲパルト級フリゲートとその乗員の方々も参加していましたが、「いずも」の艦内見学をしていたようです。日本の「将来空母」として、その艦名はインド太平洋地域に一定の知名度を有しているからこそ、毎年のように展開し、日本の姿勢を体現しているともいえます。

 今回の「いずも」のカムラン湾寄港から2日後の6月25日、アメリカ海軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」も、ベトナム中部のダナンに寄港しています。アメリカのラーム・エマニュエル駐日大使は両艦のベトナム寄港について、自身の公式ツイッターで「(両艦が)相次いでベトナムを訪問したことは海上安全保障協力に関する歴史的なこと」だと述べました。

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シンガポールで開催されたIMDEX ASIA2019で一般公開された「いずも」(竹内 修撮影)。

 もちろん念頭にあるのは中国です。中国は南シナ海にある南沙諸島の領有権を主張していますが、ベトナムも同様の主張をしており、南沙諸島の岩礁を埋め立てて軍事基地を建設している中国に対して神経を尖らせ、中国の力、すなわち軍事力を背景とする現状の変更を容認しない姿勢を明確にしています。

 ベトナムは中国の支援を得てベトナム戦争に勝利しましたが、そのときの敵国だったアメリカの原子力空母と、ベトナム戦争で事実上アメリカを支援した日本の「将来空母」である「いずも」の寄港を受け入れ、日米両国などと結束して、中国の力による現状の変更を容認しない姿勢をいっそう明確にしたのです。これは歴史の皮肉のようにも、エマニュエル大使が言う「海上安全保障協力に関する歴史的なこと」だとも、筆者には思えます。

【了】

【え…もう実質「空母」】空母改修中のいずも型&発着するF-35B(写真)

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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