今さら新車に「ドライブレコーダー内蔵」が増えてきたワケ 自動車メーカーは何を“恐れていた”のか
これぞ「“内蔵”のいいところ」とは?
それと「EDR(イベントレコーダー)」の搭載もドライブレコーダーの搭載を遅らせた可能性があります。これは車両の速度や、アクセルの開度、ブレーキ操作の有無、ハンドルの切り角、加速度、エンジン回転数、ABS作動の有無、シートベルト着用の有無といった車両運行データを常時記録する装置で、航空機に搭載される「ブラックボックス」と同様の装置との位置づけです。EDRはエアバッグ搭載車にはすでに装備されており、これがあれば肖像権の侵害が絡むドライブレコーダーをあえて搭載する必要性は低いと考えられた可能性もあるのです。
とはいえ、日本ではトヨタや日産がドライブレコーダーのライン装着を開始したことで、事実上の“露払い”は完了。これから登場する新型車にはドライブレコーダーが標準化されていくと思われます。
さて、ドライブレコーダーをライン装着したことで、後付けではできなかった機能も追加されるようになりました。それはドライブレコーダーで撮影した映像を車両側のECU(電子制御ユニット)へ記録するようになったことです。すべての車種ではありませんが、トヨタではクラウンやプリウス、シエンタなどでこれを実現。従来のmicroSDカードへの記録に比べて、エラー発生率を大幅に引き下げたのです。
映像を取り出す際もWi-Fi経由でスマホにダウンロードできるようにし、これによってmicroSDカードの紛失や挿入時のトラブルも解消。まさにライン装着されたドライブレコーダーとしてのメリットを活かせるになったわけです。一方、日産の新型セレナなどはmicroSDカードに記録する方式ですが、いずれにしても後付け感なくドライブレコーダー機能を活用できるのはライン装着のメリットでしょう。
んー残念! 内蔵ドライブレコーダー活用は道半ば
一方で、新型クラウンで残念に思ったこともあります。それはテレマティクス用として通信機能が標準で搭載されているにもかかわらず、ドライブレコーダーはそれを活用できていないことです。
仮に通信機能を活かせれば、衝撃を受けた際に映像を自動的にサーバーや指定先へ自動送信したりできるようになります。万一、車体が火災などに見舞われてしまっても映像は残すことができ、駐車監視にしても、衝撃を検知したときは即座にスマホなどでその状況を把握することが可能となるはず。これはほぼ同仕様を搭載する新型プリウスでも変わっていません。
その理由は今のところ掴めていませんが、考えられるのは動画を送信するにあたってのECUの負荷を抑えること、あるいは通信コストがかさむのを恐れたのではないかということです。ただ、日産はすでに純正で通信機能を備えたドライブレコーダーを販売しており、その通信費も半年間は無料で使え、その後は月額330円で利用できるようにしています。トヨタも他のデジタルサービスで有料課金をしていることを踏まえれば、決して難しくはないように思えます。
果たして、“内蔵ドライブレコーダー”としてどんな形で進化していくのか、今後の動向を注視していきたいと思います。
【了】
Writer: 会田 肇(乗り物ライター)
茨城県出身。自動車雑誌編集者を経て、フリーランスへ転身。音楽を聴きながらドライブするのが大好きで、それがカーナビやカーオディオ評論を行うきっかけとなった。近年は自動運転に絡むITSの取材活動も力を注ぐ。日本自動車ジャーナリスト協会会員。デジタルカメラグランプリ審査員。
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