今さら新車に「ドライブレコーダー内蔵」が増えてきたワケ 自動車メーカーは何を“恐れていた”のか

メーカーにとって怖い訴訟社会

 たとえ映像をアップするのはユーザー側だとしても、それができる環境を提供したのはドライブレコーダー機能を搭載した自動車メーカーです。この肖像権絡みで今でもドライブレコーダーを禁止している国や州も実際に存在し、内蔵したクルマを販売すること自体が訴訟の対象になったりはしないか――先のADAS担当者が心配していたのはこの部分だったのです。

 ただ、世の中では日本以外でもドライブレコーダーが急速に普及している現状もあります。ADAS担当者は「肖像権への配慮とのバランスでどうすべきかメーカーとしても悩んでいるところ」と話し、「どこかがADASカメラを活用したドライブレコーダー機能を露払い的に装着してくれると心強いんですが……」と本音を語っていたのも確かです。

 そんな状況下でトップを切って動き出したのがトヨタでした。まず2020年6月に登場したハリアーに「録画機能付デジタルミラー」という形で搭載して応えました。ただ、この時は音声記録を行わないことや、録画したものを再生する機能はなかったり、駐車監視を非対応にしたりしたことを考慮して「ドライブレコーダー」とは呼んでいません。カメラもデジタルミラー用として搭載した別のカメラを使っていました。

 しかし、トヨタはこの搭載により、ドライブレコーダーの標準化を希望する声が多く寄せられていることを知ります。これが新型クラウンへのドライブレコーダー標準搭載への流れにつながったのです。このあたりの事情をクラウンの担当者に聞くと「『ハリアー』で録画機能付き電子ミラーとして出したところ、この評判がとても良かった。これならドライブレコーダーとして搭載できるのではないかと考えた」と話していました。

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カー用品店で販売されているドライブレコーダーの一例(写真はオウルテック製 OWL-DR803FG-3C)。取り付けのためのステーや配線が露出されるのはやむを得ない(会田 肇撮影)。

 とはいえ、意外にもトヨタとしては肖像権についてはそれほど気にしていなかったようです。トヨタとしては法規制がなく、ニーズがあれば期待に応えるのがメーカーとしての立場というわけです。事実、日本では新型プリウスにドライブレコーダーを搭載しましたが、訴訟社会と言われる北米市場ではデジタルミラーだけの搭載にとどめています。このことからもその姿勢は明確です。

【え…】羨ましいほどスッキリしている「内蔵ドライブレコーダー」(写真で見る)

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