欲しいのは18きっぷ愛好家だけ? 静岡県内の東海道本線に「快速がない」ワケ JR東海の答えは

JR東海、静岡県内区間にも注力

 最後に、JR東海の静岡県区間の取り組みについて尋ねました。主に5点あるそうです。

(1)新駅設置:2001年「愛野駅」、2020年3月「御厨駅」
沿線自治体からの要請を受け、利用状況、交流人口の増加等を考慮し設置。

(2)ダイヤの最適化
静岡駅の発車本数は国鉄時代に比較して大幅に増加している。さらに毎年3月のダイヤ改正で、時間帯や区間ごとの乗車率を元に、ダイヤと編成両数を見直す。2023年3月のダイヤ改正では、東海道本線と新幹線の乗り換え時間を見直した。

(3)多客期の臨時列車や増結
年末年始や大型連休など利用者数が増える期間のほか、沿線でコンサートやスポーツイベントを開催する日などにピンポイントで増発や列車の長編成化を実施。たとえばコロナ禍前の2019年に行われた「袋井遠州花火大会」では、34本の臨時列車を設定した。

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東海道本線静岡県内区間の1日平均乗客数(静岡県統計年鑑 運輸・通信)より。

(4)沿線地域の活性化の取り組み
「ラブライブ!サンシャイン!!」号、「島田ぼんぼり祭り」号、「藤枝 藤まつり」号、「菊川 de 逢える」号などのイベント列車、沿線各地のイベントと連携したさわやかウォーキングの開催などを実施。多くの人が沿線各地の魅力ある自然、歴史、文化等に触れられる機会を増やすなど、関係する自治体や地元の協力を得ながら、積極的に沿線地域の活性化に取り組む。

(5)積極的な車両投入
313系を投入し、国鉄車両からの置き換えを完了。今後は名古屋、静岡都市圏に最新型の315系を投入予定。

 筆者(杉山淳一:鉄道ライター)としては、現在の東海道本線静岡区間は、大手私鉄の無料優等列車に匹敵する駅間距離と所要時間だと感じます。たとえば静岡鉄道の静岡清水線は、新静岡~新清水間で合計15駅ありますが、これに対してほぼ同区間で並行する東海道本線の駅は、わずか4駅しかありません。

 つまり、現在の東海道本線静岡区間は十分に快速なのです。今後、地域の要請などで中間駅がたくさん増えたとき、改めて快速列車が設定されるかも知れません。

【了】

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Writer: 杉山淳一(鉄道ライター)

乗り鉄。書き鉄。ゲーム鉄。某出版社でゲーム雑誌の広告営業職を経て独立。PCカタログ制作、PC関連雑誌デスクを経験したのち、ネットメディアなどで鉄道関係のニュース、コラムを執筆。国内の鉄道路線踏破率は93パーセント。著書に『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。日本全国列車旅、達人のとっておき33選』(幻冬舎刊)など。

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1件のコメント

  1. 東海道線の静岡県区間(熱海〜豊橋間)には、ほぼ在来線に並行して東海道新幹線が走っていて、最低でも「こだま」が1時間あたり2本運転されている。
    つまり静岡県内完結であっても速達性を求めるのなら「新幹線を利用してください」となるのである。