米軍「退役させたい」議会は反対だった? 異形の攻撃機「A-10」の行方 湾岸戦争の伝説も“危ない”評価か

独特な外観と、数々の逸話から日本でも一部の航空ファンから熱狂的な支持を受けるA-10「サンダーボルトII」攻撃機ですが、アメリカ空軍は退役させたがっているそうです。しかしそれに議会が難色示したのだとか。その理由を探ります。

今後のA-10の役割は誘導兵器の運搬機か

 もちろん、運用するアメリカ空軍も、A-10の脆弱性をそのまま放置したワケではありません。湾岸戦争後に再評価されたA-10は、のちに能力を向上させる近代化改修を段階的に受けており、初期モデルだった「A」型も2006年からは精密誘導兵器やターゲティングポッドが運用可能な「C」型へとアップデートが図られています。

 この「C」型の一番の特徴は、ターゲティングポッドやデータリンクなどによって目視外の遠方の目標でも識別できるようになったことです。筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)は実際にアリゾナ州のデイビス・モンサン空軍基地でA-10飛行隊を取材しましたが、そのとき所属するA-10パイロットが直接話してくれたのは、「(従来のA型では)目標に接近して識別すること自体が、リスクを伴う挑戦的な行為。ターゲティングポッドなどを装備するC型は、状況認識能力が高く、それがA型とC型の一番の違い」ということでした。

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1991年の湾岸戦争で赤外線誘導ミサイルが命中したA-10。被弾後の生存性の高さを証明したが、同時に被弾数の多さから、脆弱性も浮き彫りとなった(画像:アメリカ空軍)。

 A-10の全面退役が現実的になった今でも、この機体を現代戦闘に用いることができるよう改良は進められています。今年(2023年)4月にネリス空軍基地の第422試験評価飛行隊が公開した写真では、同部隊のA-10に16発ものGBU-39小口径誘導爆弾を搭載して試験飛行を行っています。

 GBU-39は航空自衛隊でもF-35で運用を始めた新しい精密誘導兵器です。重量は約130kgと小さいですが、GPS/INS(慣性航法)によって誘導されるため命中精度が高く、なによりも目標から離れた距離から投下できるスタンドオフ兵器であるため、投下母機はより安全に攻撃できるのが特徴です。

 GBU-39のような遠距離から攻撃できる兵器ならば、防空兵器に脆弱なA-10でも低リスクで地上攻撃を行うことができます。また16発という搭載量は、搭載兵装を機内に収納するF-22やF-35のようなステルス戦闘機よりも圧倒的に多く、それはA-10だけの長所にもなるでしょう。

 将来のA-10の任務は、我々がイメージするような地を這うかのごとく低空で暴れる攻撃機ではなく、多数の誘導兵器を抱えて戦場を飛ぶ爆弾の運送屋的な役割かもしれません。

 今後、現役で飛ぶA-10は徐々に減っていくものの、最後の飛行隊が運用機を手放すまではアメリカ空軍の戦力として第一線に立ち続けるでしょう。ひょっとしたら、そのときの戦い方は今のA-10とは異なるものになっているかもしれません。

【了】

【自慢の砲が火を噴くぜ!】戦車もイチコロ 30mmガトリング砲を射撃するA-10ほか(写真)

Writer:

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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