新東名の全通を阻む“最大の難関トンネル”とは 「地質ぐちゃぐちゃ」開通遅れの原因がココ

神奈川県西部の山岳地帯で、新東名の未開通区間の建設が進んでいます。なかでも関係者が「最大の難関」と口を揃えるトンネルが「高松トンネル」です。開通見通しを何度も繰り延べてきた原因がここにありました。

見るからにヤバイ山

 神奈川・静岡県境付近で新東名高速の未開通区間(新秦野~新御殿場)の建設が進んでいます。2023年7月31日、NEXCO中日本が主催する一般の親子向け見学ツアーの一環として、その神奈川県側の工事現場が公開されました。

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建設中の新東名「中津川橋」「高松トンネル」(乗りものニュース編集部撮影)。

 ツアーで最後に訪れたのが、新秦野ICにも近い松田事業PR館(松田町)です。中津川東岸の渓谷を望む崖の上にあり、川を跨ぐ建設中の「中津川橋」と、対岸の山を貫く「高松トンネル」の工事現場を望むことができます。

 この未開通区間の開通見通しは、2020年度、2023年度、そして現在は2027年度と何度も繰り延べられてきましたが、その主な要因だといえるのが高松トンネルの工事です。関係者は、この区間が建設中の「最難関」と口を揃えます。

 ここは伊豆半島と丹沢の地質の境目で、断層帯があり、現地スタッフいわく「地質がぐちゃぐちゃ」なのだそう。非常にもろい地質で、トンネル内では掘削面の崩落や湧水が相次いで発生しているといいます。そのたびに総員を待避させ、大きな事故や犠牲者は出ていないとのこと。

「山の表面が波打ってボコボコでしょう。見るからに土の圧が高いんです。現在の東名を建設したときは、この地質を極力避けたのですが、(より山側を通す)新東名はそうも言っていられません」。

 スタッフはこう話したうえで、掘ったらすぐにトンネルの内壁などを固める方法で進めていると説明してくれました。現在は全長2.9kmのうち半分ほどを掘り終えたといいます。

 その手前の中津川橋は現在、橋脚が立ち上がり、少しずつ橋桁の建設が進んでいます。箱状のコンクリート製橋桁ですが、側面には「バタフライウェブ」と呼ばれる蝶のような形をしたコンクリートの薄いパネルを並べ、構成しているのが特徴。これにより軽量化が図れるほか、パネルとパネルの間の開口部から光が入るのでメンテナンスも容易なのだそうです。最終的には、主塔から斜めにケーブルを張って橋桁を吊る「エクストラドーズド橋」という型式になります。

 この橋も、川に沿って通る断層帯に対応するため、型式の変更や杭の位置を変更するなどして決まったもの。その一環として、中津川橋の下り線(海側)は、高松トンネル内に橋桁の一部が入り込むような形で設計されています。このため、高松トンネルは下り線の坑口が、上り線(山側)よりも断面が大きくなっています。

 ちなみに、一般公開もされている松田事業PR館(要予約)では、これら工事の概要や完成イメージなどを、ヘッドセットをつけVR映像で体感することができます。

【了】

【え…】これが新東名最大の難関「見るからに地質がヤバイ山」です(地図/写真)

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