歩道の「縁石の段差」どうにかならない? 自転車でズルっとコケる恐怖…最近は「コケにくい」!?

自転車で車道から歩道へ乗り上がるとき、縁石でタイヤを滑らせて転んだことがあるかもしれません。最近は、段差の高さも見直され、転びにくいものになっているといいます。

自転車で微妙に超えづらい段差

 自転車で車道から歩道へ乗り上がろうとしたとき、車輪が縁石を超えられずズルっと横滑りして転んだ……そんな経験のある人もいるのではないでしょうか。

 この「横滑り」は、自転車で横断歩道を渡って歩道へ進入する際にも起きたりします。交差点部は縦横どちらの横断歩道にも対応するため、歩道縁石がカーブを描いていることが多く、自転車の車輪の向きに対し「斜め」になりがちなのです。

 この段差、どうにかならないのでしょうか。

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歩道が一部低くなっている「切り下げ部」(画像:写真AC)。

 まず、この段差はどう決められているのでしょうか。道路構造の基本的なことは「道路構造令」で決められていますが、歩道の段差などより細かいことは、国土交通省の地方整備局が公表する「設計便覧」で示されています。さらに地方自治体はそれを準用して「歩道設計ガイドライン」など独自の設計基準を設ける場合があります。

 さて、たとえば北陸地方整備局の設計便覧を見ると、乗り入れ部(切り下げ部)の高さは「2cm」となっています。いっぽう近畿地方整備局や九州地方整備局では「5cm」の標記が。

 2cmか5cmかばらつきがあるようですが、2022年に「道路の移動円滑化整備ガイドライン」が策定され、そこでは車いすの乗り上げなどを考慮し「2cm」とすることと定めているのです。なおこれは、「道路移動等円滑化基準に基づき新設または改築する」道路はこれに基づくこととしており、このガイドライン自体は全ての道路に当てはめるものではなく、「設計便覧」などの上位にくるものではありません。

なぜ今まで微妙な高さだったのか

 つまり、今まで「自転車でコケるかもしれない」5cmの段差は、近年になって次第に2cmと低くなり、かなり乗り上げやすくなってきているということです。

 なぜ今までその低さで設置されなかったのでしょうか。とある設計コンサルタントで道路設計を担当する人物は「縁石は車道の排水を歩道へ流れ込ませない役割もあるので、低すぎると問題になります」と話します。

 現在は、集水ますと集水ますの間でも雨水を取り込める穴があるなど、路肩部の排水が効率化しています。そのため、縁石の低さはあまり問題にならなくなっているといいます。

 さらにもう一つの理由として「コンクリートブロックを2cmの薄さで大量生産するのは、至難の技です」と話します。

 昔は「縁石」の名のとおり、歩道の端に独立して並べられるものでした。強度を保つため鉄筋コンクリートが使用されますが、薄いブロックだとコンクリートを打つ際の厚みのバラツキが、品質に大きく影響してきます。だからといって既製品を使わず、現場でコンクリートを打っていては、時間や手間がいくらあっても足りません。

 現在、路肩の排水は「路肩部(エプロン)と縁石が一体になった」形が一般的で、もはや縁石ではなく「L型側溝」と呼ばれています。これなら、十分厚みのあるエプロンの一部を少し盛り上げるだけなので、品質のバラツキが問題になってきません。

※ ※ ※

 縁石で転ぶ際、身体が別の方向へ自転車ごと持っていかれる体感があり、怖いものです。歩道へ乗り上げる際は、なるべく直角に近い角度で入るように心がけるのが大切です。

 転んで大けがをし、道路管理者への損害賠償を求める裁判が起こされることもあります。この際、縁石の設計高さ自体は基準どおりであれば問題にされず、適正な通行であったかなどが逆に問われます。たとえば「縁石が浮き上がっていて、設計より段差が大きくなっていた」など、道路管理者が責任を問われる可能性のある場合もあります。しかしそれを避けるため、道路管理者は日々パトロールを行い、利用者が安全に通行できるかどうかを厳しくチェックしています。

【了】

【えっ…!これが「クルマの一時停止率が爆上がり」した交差点です】

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コメント

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1件のコメント

  1. 転んで大けがをし、道路管理者への損害賠償を求める裁判は、本当に行われているでしょうか。
    四輪車と同様に自転車が歩道に入る時は、一時停止して後方確認し、徐行で歩道に乗り入れるのが鉄則です。この場合、たとえ段差が5cm以上であっても、横滑りで転倒はありえません。
    怪我は道路の問題ではなく、自業自得の可能性が高いです。
    大怪我をしてからでは遅いですから、子供にはきちんとしたルールを教えるのが大切だと思います。