あまりに「碓氷峠に特化しすぎた」? マッスル機関車EF63 “横軽”とともに消えたワケ

鉄道は本来、勾配が苦手です。そのため峠越えの区間では、勾配がゆるやかになるよう線形を工夫したり、補助用の機関車を付けたりしますが、かつて国鉄・JRで最も急勾配の区間だった「横軽」こと碓氷峠には、特別に造られた超強力な補助機関車が活躍していました。

アプト式から通常の粘着式へ……EF63の登場

 信越本線は、トンネルが連続するため煙の出る蒸気機関車は不向きであったことから、早くから電化され、電気機関車による運転に切り替えられていたものの、輸送量の少ない山岳鉄道用に開発されたアプト式は少ない連結数でゆっくりとしか走れません。当時は単線ということもあり列車本数も1日30往復程度しか運転できず、輸送のボトルネックとなっていました。

 国鉄は、こうした問題を解消すべく、通常の粘着式による新線を建設することを決定。1963年にアプト式は廃止されますが、この時に碓氷峠専用の補助機関車として開発・投入されたのがEF63です。

 EF63は2両でペアを組む「重連」運転を基本とし、常に標高の低い横川方に連結されました。峠を登る下り列車では後押しをして、逆に降りる場合の上り列車では前で受け止めるように支える役割を担っていました。

Large 20230811 01
アプト式のラックレール(咲村珠樹撮影)。

 全ての列車に対応することが必要なので、EF63の列車との連結側となる軽井沢方には電車用の密着連結器とともに、客車・気動車・貨車用の自動連結器を切り替え可能な「両用(双頭)連結器」を日本で初めて装備。また、機関車側から対応する電車を協調制御するため、制御用信号をやりとりする各種のジャンパ連結器も追加しています。これにより、顔つきはずいぶんと「いかつい」ものになっていました。

 急勾配で一番危険なのは、車輪が空転したりブレーキをかけたのにスリップしたりして、滑り落ちてしまうことです。このためEF63には、最終手段として電磁石の力でレールに吸い付く「電磁吸着ブレーキ」が国鉄・JRで唯一、装備されました。ただ、それでも下り勾配では速度が出過ぎると停止しきれない場合があり、設定された上限速度を超えないよう、スピードを抑える安全装置も搭載されています。

 こういった特別装備により、EF63の重連による協調運転では碓氷峠の通過時間がアプト式時代のおよそ半分にまで短縮されています。このようなスピードアップや、線路の複線化により、横川~軽井沢間における列車の運転本数は倍増しました。

 ちなみに、鉄道ファンからは、ヒマラヤ登山の際に、その登頂をアシストするシェルパ族になぞらえ、「峠のシェルパ」の愛称でも親しまれています。

【489系特急引く往時の姿も】EF63電気機関車の走る姿&各部のディテール(写真)

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 「USB挿しっぱ」でクルマが“故障”する? 三菱公式の投稿にSNS騒然 「一体ナゼ?」「これマジで起きるよ」
  2. 都市に迫るロシア軍の「弾道ミサイル」が“空中で木っ端みじん”になる瞬間をウクライナ軍が公開 追尾から撃墜まで詳細に
  3. 海自艦がロシア海軍の「超静かな潜水艦」を確認!浮上航行する姿を捉えた画像を防衛省が公開
  4. 海自潜水艦 アメリカ海軍の“歴戦の揚陸艦”を標的に魚雷発射! 実弾演習で巨大な水柱があがる瞬間を公開
  5. 海自「イージス艦の相棒」が火を噴いた!ミサイル発射の瞬間を防衛省が公開 “強力な防空能力”を持つ汎用護衛艦
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  3. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開