「迷彩服の警察官」って? 岐阜の乱射事件で出動した謎多き「警務隊」の実態 自衛官としてはちょっと羨ましい?

自衛隊の警務官 権限はどこまで?

 自衛隊の警務官が担う主な役割は、今回の岐阜での事案のように、司法警察職員として自衛隊内の犯罪に関する捜査や被疑者の逮捕を行う以外に、保安職務としての交通統制や警護任務なども含まれています。

 この保安職務としての任務がよくわかるのが、記念式典での警務隊の動きです。中央観閲式を始めとして各地で行われる航空祭や駐屯地記念行事などでは、来賓として会場入りした政治家の警護や交通誘導を行っています。ほかにも、災害派遣要請に基づき自衛隊が出動し、活動を行っている被災地などでは、現場で交通統制にあたる姿も見られます。

 警務隊は陸海空の3自衛隊で組織されているため、全てを記すと膨大になってしまいます。そこで今回は、3自衛隊の警務隊の中で最も規模が大きく、かつ目撃頻度も多い陸上自衛隊の警務隊について見てみましょう。

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災害派遣の現場で交通統制を行う警務隊(武若雅哉撮影)。

 陸上自衛隊の警務隊は、防衛省・自衛隊の総本山ともいえる市ヶ谷駐屯地に、大元である警務隊本部と中央警務隊が編成されており、地方組織として5個の方面警務隊があります。そして方面警務隊の下位部隊として地区警務隊と保安警務中隊が組織され、さらに細かく警務派遣隊や警務連絡隊が編成されることで、全国の駐屯地にくまなく警務官が配置される形を採っています。

 では、実際に自衛隊の警務官はどこまでの権限を有しているのでしょうか。

 旧日本軍の憲兵であれば、民間人への司法警察権や行政警察権などもありましたが、自衛隊の警務官にその権限はありません。あくまでも、罪を犯した自衛官に対する捜査や逮捕などが行えるだけです。この背景には、日本国憲法の第76条第2項前段にあるように、特別裁判所となる軍法会議を設置することができないため、警務官が罪を犯した自衛官を独自に起訴したり、何かしらの法的処分を行ったりすることができないという制限もあるからです。

 こういった理由から、冒頭に記したように岐阜の事件でも、警務官は罪を犯した自衛官を逮捕し、取り調べを行った後は、被疑者の身柄を検察庁へと送るのです。

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