潜水艦の錨はツルツルって? その名も「マッシュルームアンカー」 まったく尖ってないワケは

各国の海軍が保有する艦艇の中で、最も秘匿性が高いともいわれる潜水艦も船である以上、定期的に港へ停泊する必要があります。そのためには錨が必要ですが、実は一般的な錨と形が大きく異なるようです。

錨を収める場所や形状は機密扱い

 各国の海軍が保有する艦艇の中で、最も秘匿性が高いともいわれる潜水艦。港へ停泊させるには錨が必要になりますが、潜水艦の錨は目立たないところにあるため、容易には確認できませんが、その形は一般的な船のそれとは大きく異なるようです。

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横須賀に入港する海上自衛隊の最新鋭潜水艦「たいげい」(画像:海上自衛隊)。

 第二次世界大戦中までの潜水艦は洋上で航行する時間も長かったため、普通の艦艇のような錨が船首付近についていた艦がほとんどでした。しかし戦後、潜水艦の技術は急速に発展し、水中速力と静粛性が重要になっていきます。

 水上艦艇と同じように錨を艦体左右へ装備していたとすると、錨の爪や収納用のくぼみが水流を乱れさせて水の抵抗を生み、速力低下の要因や水中雑音の発生源となります。そのため錨の位置についても考慮されるようになり、潜航時の抵抗が少なく、騒音の発生しにくい船底に付けられるようになりました。

 艦底にはくぼみが設けてあり、そこにきれいに錨が収まるようにしています。また形状も、艦底に綺麗に収まるよう、あえて爪のないシンプルな円形としており、その形状から「マッシュルームアンカー」と呼ばれます。海上自衛隊では1962年6月に就役した「はやしお」で初めてこのタイプの錨が採用され、以後、海上自衛隊の潜水艦はすべてこの形状としています。

 マッシュルームアンカーは、形状から海底の把駐力、いわゆる係留する力は通常のかぎ爪付きの錨と比べて低くなっています。しかし、作戦行動中に潜航しながら海中に留まる際は、海中に降ろすことも可能で、海流に流されないよう留まることできるという機能もあります。

 なお、2023年現在はほとんどの潜水艦が船底にマッシュルーム状のアンカーを使用していると思われますが、詳細な形状に関しては、潜航時の能力などの軍事機密に関わるということで、秘匿されています。

【了】

【え、こんな場所に!?】これが海自潜水艦の「錨」です(写真)

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