本当にあるの? 自衛隊の秘密組織「別班」ドラマで話題 “類似部隊”はアフガニスタン派遣済みって?
「別班」ではなく「別室」なら…
では、彼らは現地で一体何をするのでしょうか。もちろん、ドラマで描かれている「別班」のような動きはしません。警察や公安関係者と対立するようなことはせず、むしろ協力的な体制を整え、お互いに収集できた情報を交換しているでしょう。もちろん、この協力体制のなかには現地の大使館員や、JICA(国際協力機構)などの職員も含まれていると考えられます。
つまり、ドラマに登場する「別班」とは完全に異なる動きをするのが陸上自衛隊の情報関連部隊なのですが、ここまで「別班」に注目が集まるのは、防衛省・自衛隊にならこのような人知れず活動している部隊があってもおかしくないと、多くの人たちが考えているからでしょう。また、他国の軍隊には同様の情報組織が存在し、小説や映画、マンガなどで真実とフィクション織り交ぜた活動内容が描かれていることが多い点も挙げられます。
だからこそ、ドラマで描かれるエンターテインメント性が少々強めな架空の組織「別班」も、多くの人たちの興味を引き付けているのかもしれません。ひょっとしたら、本当に「別班」なる組織が陸上自衛隊に存在しているかもしれませんが、だとしたら、なおさら公にはならないでしょう。
ちなみに、陸上自衛隊の管理部門である陸上幕僚監部には、過去「陸上幕僚監部調査部第2課別室」、通称「調別」と呼ばれる秘匿部門があったそうです。ここは1997(平成9)1月、防衛省の一大情報機関である情報本部が発足した際に統合・廃止されたといわれており、上部組織である陸上幕僚監部調査部も、2006(平成18)年3月に統合幕僚監部が発足し、同時に統合情報部が新設されたのに伴い、廃止されています(代わりに運用支援情報部が陸幕に新設)。
思えば、警察の特殊部隊である「SAT(特殊急襲部隊)」も約20年ものあいだ、存在が秘匿され続けました。もしかしたら、何年後かに「実は存在していました」と公になるかもしれません。
【了】
Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)
2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。
コメント