もともと「核爆撃のお供」!? ジェット空中給油機KC-135 ボーイングの一大勢力にのし上がるまで

アップデートされ、まだまだ現役

 空中給油は航続距離と滞空時間の延長を可能にしました。これにより軍用機の作戦能力は飛躍的に向上しました。ただ、近年注目されている空中給油のメリットは別にあります。

 それはエンジン寿命の延長と保守軽減による経済的な効果です。どういうことかというと、空中給油により滞空時間が増えるため、作戦空域には長く留まることが可能になります。また教育訓練に関しても、一度の飛行で行える訓練項目が増えます。その結果、空中給油を活用することでエンジンに大きな負担がかかる離陸回数を減らすことができるようになったのです。

 特に離陸時、アフターバーナーを使用する戦闘機ではこのメリットは大きく、保守コストの減少という大きな利益があると報告されています。各国が空中給油機を配備するようになったのは、この理由が大きいといえるでしょう。

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2022年9月11日、青森県の三沢基地で撮影したKC-135R(細谷泰正撮影)。

 こうして、アメリカ空軍にとって必要不可欠な機種となったKC-135ですが、運用開始から四半世紀が経った1980年代には、性能向上と寿命延伸を図るためにエンジン換装と主翼外板の張替え、コックピットの近代化などが実施されています。

 特に、エンジンに関しては、戦闘機とほぼ同じターボジェットエンジンを、旅客機と同じ経済性に優れたターボファンエンジンに換装したことで、高出力化、低燃費化と同時に騒音低減まで達成しています。

 アメリカ空軍の資料によると、KC-135Aの旧式化していたJ57エンジンを最新型のCFM56に換装したところ、燃費は25%向上しながら給油可能な燃料は50%も増えることが実証されたのだとか。しかも離陸時の騒音が劇的に減少し、音圧レベルはJ57のなんと20分の1にまで低下。これによりアメリカ連邦航空局が民間機に義務付けていた騒音規制もクリアすることができたそうです。

 なお、CFM56(軍用名F108)エンジン搭載機はKC-135Rと呼ばれていますが、全機を同エンジンに換装することは予算的に厳しかったため、一部のKC-135Aは民間機市場で余剰となっていたTF33エンジンに換装され、KC-135Eの名で2009年まで使われていました。

 人間でいえば還暦を迎えたといえるKC-135ですが、その後継機KC-46の配備はまだ始まったばかりです。徐々に退役する機体も増えていますがKC-135の活躍は当分続く見込みです。しばらくはB-52とともに軍用機としての長寿記録を更新し続けていくことでしょう。

【了】

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Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

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コメント

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1件のコメント

  1. 1956年に初飛行なのに「初飛行以来69年」とは???
    今年は2023年のはず。