異形のステルス艦「ズムウォルト」ようやく使いものに?「1発=1億円砲」を捨てて装備する新兵器とは

さらにお金かけて改修して使い物になるの?

 今回の極超音速兵器の搭載は、使えなかったAGSを換装する形で行われるため、ズムウォルト級にとってはメリットの大きな改修のようにも思えます。しかし、ズムウォルト級の建造は1隻あたり45億ドル(約6650億円)であり、米メディアのブルームバーグが報じたところでは3隻を含めた計画全体の費用は220億ドル(約3兆2000億円)にも上るのだとか。このため、アメリカ国内でもズムウォルト級に関してはメディアなどで批判的な意見が根強く、そんな船にさらなる予算を注ぎ込んで改修を施すことに疑問を持つ人も多いようです。

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2020年3月にハワイ州カウアイ島で行われたC-HGBの発射試験(画像:アメリカ海軍)。

 ちなみに今回の「ズムウォルト」の改修工事で造船所と結ばれた契約の金額は1億5480万ドル(約228億円)だそうです。

 さらに、前述したように目玉装備として期待されている極超音速兵器自体も、現在は開発中の段階であり、その配備も予定通りに進まない可能性が指摘されています。

 アメリカ会計検査院が今年の6月に発表したレポートには、CPSプログラムには「技術の成熟度を実証するために多くの作業が残っている」として配備延期の可能性を指摘しています。加えて、CPSの配備が今回の「ズムウォルト」の近代改修工事の期間中に間に合わない場合は「工事期間の延長か、次の改修工事を待たなければならない」とまで明記しています。

 これらを鑑みると、「ズムウォルト」への極超音速兵器搭載は予定通りにいかず、さらなる追加予算さえ必要になる可能性があると言えるでしょう。

 先進的で外見上も誰もが振り向くくらいに特徴のあるズムウォルト級。しかし、実際には予算超過とそれによる計画の縮小・変更によって、その存在意義を問われている状況にあります。

 よく言えば、極超音速兵器という新兵器の搭載によって、その評価も変えられるポテンシャルを秘めている軍艦だと「ズムウォルト」を捉えることもできなくはないですが、そこに至る道はまだまだ遠く険しいようです。

【了】

【ロシア関連でいまや禁句!?】「ズムウォルト」の船尾に描かれた巨大な“アレ” (写真)

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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コメント

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1件のコメント

  1. 737MAXの機種変更もiPadだったしね、ボーイング