異形のステルス艦「ズムウォルト」ようやく使いものに?「1発=1億円砲」を捨てて装備する新兵器とは

最大のウリだった主砲はタマなくて使えず

 今回の改修では4つの発射管を追加するために、これまで搭載していた「ズムウォルト」の主砲である2基の155mmAGS(先進砲システム)を撤去することになります。AGSはズムウォルト級にとって艦のコンセプトを象徴する装備品でした。

 そもそもズムウォルト級は非常に特徴的な外見をしています。その理由は極端なステルス性を追求したからでした。少ない平面で構成された船体は、フネというよりも建物のような印象がありますが、これによってこの艦のレーダー反射断面積はアーレイ・バーグ級の50分の1にまで低減されていると言われています。

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ミサイルの発射試験を行う「ズムウォルト」。本艦ではミサイル発射管としてMk.57 VLSが船体の外側を包み込むように配置されている(画像:アメリカ海軍)。

 ズムウォルト級の開発コンセプトのひとつは、この敵に見つかりにくいステルス性を生かして敵地の沿岸部に近づき、そこから陸上への火力支援を行うことでした。155mmAGSは、その攻撃の際に主力となるべき兵器だったのです。

 砲弾にはGPSと慣性航法装置による誘導とロケット補助推進を採用した専用の LRLAP(長射程対地攻撃砲弾)が開発され、この砲弾を使った場合の最大射程は約154kmにもなる計画でした。なお、155mmAGSの砲塔内部は完全に自動化されており、毎分で10発のレートで射撃が可能でした。

 しかし、政治的駆け引きの結果、ズムウォルト級は建造数が削減されます。それによって、この専用砲弾の調達コストが1発あたり80万~100万ドル(約1億1000万~1億4000万円)まで高騰してしまいます。当初の見積もりは1発約510万円程度になる見込みでしたが、ここまで高騰すると、より高性能な巡航ミサイルと同じくらいの金額であり、コスパ(費用対効果)を考慮すると、とうぜん後者を調達すべきとなるのは明らかでした。

 あまりにも高い金額と、ズムウォルト級が3隻しか建造されなかった現状から、アメリカ海軍はLRLAPの調達中止を決定。つまり、ズムウォルト級に搭載された2門の主砲は使うことができない張り子の虎となってしまったのです。

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コメント

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1件のコメント

  1. 737MAXの機種変更もiPadだったしね、ボーイング