イスラエル鉄壁のバリア「アイアンドーム」 対ハマスでどうしても“割り切り”必要なワケ
盾だけでなく槍も イスラエルが用意したものとは
しかし「アイアンドーム」は鉄壁のバリアではありません。10月7日の攻撃のように、短時間に飽和攻撃されたら対処しようがないのです。ハマスもこの点を十分理解しており、飽和攻撃を実行するために、東京23区の6割程度という狭い面積(365平方キロメートル)のガザ地区に大量のロケット弾を隠蔽・配置し、一斉に発射する体制を整えたのです。イスラエル情報機関に見つからないようにする必要もあり、その準備は並大抵ではなかったはずです。
ハマスはロケット弾をガザ地区内で製造する様子をSNSに投稿しています。いかにもハンドメイドで粗製乱造品であることは明らかですが、小型で簡単に運搬でき、奇襲用には使えそうです。製造コストは500ドル(約7万5000円)程度とされます。
一方、これを迎撃する「タミル」対空ミサイルは1発4万ドル(約600万円)で、コスパはいかにもアンバランスです。「アイアンドーム」のような“盾”にいくらコストを費やしても防衛は成立しません。イスラエル軍は報復の空爆を開始し、戦車を含む地上部隊をガザ地区境界に集結させ“槍”も用意しています。攻撃すれば敵も高いコストを支払うことになると示すのが抑止力の本質です。
ハマスの宣伝動画には、ガザ地区の重要インフラであるはずの水道管を引きはがしてロケット弾の弾体に仕立てている様子が映っています。必死の抵抗をアピールするつもりだったのでしょうが、これら水道管の一部は、EUがガザ地区のパレスチナへの人道援助で敷設したものも含まれており、暗澹たる気持ちにさせられます。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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