宇都宮LRTなぜ「全区間が路面電車」で開業? 郊外を爆走できぬ“制約”あえて選んだ理由と「爆走の野望」とは
将来は「最高70km/hで運行したい」その方法とは
とはいえ中規模都市における本格的な都市交通を目指すLRTにとって、軌道法の制限は大きな障壁です。そこでライトラインが期待を寄せるのが「特認」です。
これは設備等による安全確保を前提として、軌道法が制限する「40km/h以上、編成長30m以上」の運転を特別に認めるものです。既存の事例でも、阪堺電気軌道の50km/h運転や、輸入車であるためわずかに編成長30mを超えてしまった広島電鉄5000形電車の場合などがあります。宇都宮市はライトラインについて、まずは40km/h運転で実績を積んだ上で、特認による速度向上を目指したいとしています。
特許申請では具体的に「将来的に自動車交通との並走区間(平面一般区間の一部)で50km/h、LRTのみが走行する区間(高架専用区間の一部)において70km/h」走行を目指すとしており、実際にライトラインの「HU300形」車両の設計最高速度は70km/hを確保し、さらに全長29.5mの3連節車も車両の増結を想定しているといいます。
好調な出足のままライトラインが成功を収めれば、第二第三の新設LRT構想が動き出すかもしれません。今後は鉄道と軌道の垣根を越えたLRT整備を促進する上で、全てを特認で解決するのではなく、時代遅れな二重行政の解決も検討する必要があるでしょう。
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Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx
鉄道と軌道の組み合わせにおいては、LRT事業の先駆けとなる、富山地方鉄道富山港線(旧富山ライトレール)も忘れてはならないですね。