海自護衛艦に陸自の大砲載せて…可能? 制圧射撃を“海の上から”するには 意外と外しやすい?

19WHSP搭載するならどんな船?

 まずは19WHSPを搭載できる海上自衛隊の艦艇を選定しなければなりません。最も使いやすいのは、いずも型護衛艦やひゅうが型護衛艦、おおすみ型輸送艦でしょう。これらの艦は、船体上面がフラットなので、19WHSPが射撃のために布陣しやすいといえます。飛行甲板や上甲板(第1甲板)などと呼ばれている広い平面スペースに4門から5門の19WHSPをズラリと並べることで、見た目的は即席の艦上戦砲隊ができあがります。

 なお、他の護衛艦にも飛行甲板はありますが、これらは搭載ヘリコプターのスペースとなるので、この部分に19WHSPを乗せるワケにはいきません。もちろん、いずも型やひゅうが型にも搭載ヘリコプターがあるので、これらのヘリコプターの運用を邪魔しない位置に19WHSPを設置する必要があります。

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新装備として配備が進む19式装輪自走155mmりゅう弾砲。タイヤ駆動のため、従来の自走砲や牽引砲よりも迅速な機動展開が可能になった(武若雅哉撮影)。

 海自側の協力のもと、いざ砲を設置したとしても、解決すべき問題は他にも多々あります。

 まずは駐鋤(ちゅうじょ)と呼ばれる砲を固定する装置の設置です。FH70などの野戦砲は、射撃時に発生する大きな反動を吸収するため、駐鋤を地面に埋めます。

 一方、19WHSPにも駐鋤はありますが、こちらはコンクリートやアスファルトで舗装された場所、すなわち駐車場や公道上でも射撃ができるよう、埋めるのではなく面で接地するタイプのものなので、船の甲板上であっても十分に射撃は可能です。

 こうして射撃準備を整えたら、今度は「命中率」の問題を解決する必要に迫られます。

 艦砲射撃を行う艦艇は、海の上に浮いた状態です。たとえ排水量が大きい船であっても、常に船体は前後左右、上下斜めに動揺しています。同じ設定で射撃しても、決して同じ場所には着弾しないともいわれているため、陸上で射撃するような精密射撃を求めることは不可能でしょう。

 なお、第二次世界大戦中における艦砲射撃の命中率は10%前後であったとか。つまり、100発撃って10発が命中するかしないかの世界なのです。

「下手な鉄砲も数を撃てば当たる」などと言いますが、この命中率では、あまりにも非効率だといえるでしょう。これなら、むしろミサイルなどの誘導兵器を用いた方が効率的かもしれません。

【GPS誘導砲弾ってこんな形】え、これが陸上自衛隊に配備されている標的船です(写真)

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