海自護衛艦に陸自の大砲載せて…可能? 制圧射撃を“海の上から”するには 意外と外しやすい?
護衛艦の艦砲射撃でOKかも…
では、野砲で命中率を改善できるものはないのか。そこで登場するのが「エクスカリバー」と呼ばれる砲弾の使用です。
正式名M982「エクスカリバー」は155mm砲用の精密誘導砲弾です。弾頭部分にGPS誘導装置が取り付けられているのが特徴で、これにより半数必中界(平均誤差半径)が5mから25m程度といわれます。要は、地上を進む味方から100mほど先を狙って落とすことができるそうです。
もちろん、味方部隊の上陸は艦砲射撃が終わってから開始されるのですが、このGPS誘導榴弾砲があれば、上陸直前まで射撃し続けることができるでしょう。
このエクスカリバーの他に、「XM1156精密誘導キット」というものも、アメリカ陸軍によって開発されています。
こうしたGPS誘導砲弾を用いれば、大幅に射撃性を改善することができると考えられます。ただ、ネックは砲弾の価格です。一般的な155mmりゅう弾は、信管と弾体セットでおおよそ10万円といわれていますが、GPS誘導タイプの155mmりゅう弾だと倍以上、最低でも30万円ほど掛かるそうです。
10発撃って1発しか当たらない従来砲弾よりもコストパフォーマンス(費用対効果)は優れているといえますが、数多く用いればかなり高くつくでしょう。
19WHSPと護衛艦を組み合わせた艦上戦砲隊は、GPS誘導りゅう弾を使用すれば無理ではないことがわかりました。ただ、そこまでして野砲を用いるメリットがあるのか、加えてそもそも数少ない大型護衛艦や輸送艦を海上自衛隊が数日間に渡って陸自のために運用してくれるのかというと、それはかなりハードルが高そうです。
最近では陸上自衛隊も、155mmりゅう弾砲FH70による洋上目標への射撃訓練を行うようになっていますが、実戦では素直にミサイル、または護衛艦による艦砲射撃、航空機からの対地支援攻撃を使った方が現実的なのかもしれません。
【了】
Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)
2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。
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