“戦闘以外”の事故500機 悪名極まる戦闘機を60年使い続けた理由とは インド空軍

国産機開発の異常の遅れが主原因か?

 まず1980年から始めていた国産軽戦闘機の開発計画が著しく遅れていたことです。「LCA(軽戦闘機:Light Combat Aircraft)」と名付けられたこのプロジェクトは、現在配備が進められている「テジャス」を指すものですが、元々はかなり前のプロジェクトでした。

 プロジェクト開始当初は、アメリカのロッキード・マーチンやゼネラル・エレクトリック(GE)も関わっていましたが、開発費高騰などの課題から、計画は遅々として進みませんでした。さらに、1998年にインドが核開発したことを受け、アメリカが制裁の一環としてロッキード・マーチンとGEを撤退させたため、初飛行に成功したのは2001年にずれこみました。その後も政治や財政の問題で計画は二転三転し、開発開始から約40年後の2021年1月、ようやく作戦機としての能力を有した機体の配備が始まりました。

「テジャス」の開発が難航する間にも、代替機が考えられていなかったわけではなく、2000年代から調達を始めていたロシア製のSu-30MKIが代役を担うはずでした。しかしこれも、インドでライセンス生産できる機体ではありましたが、ロシアからパーツを調達する必要があり配備は進まず。パキスタンや中国など対立関係にある国との国境周辺に配備されはしたものの、MiG-21を全て置き換えることは不可能でした。

 インドとしては、パキスタン空軍と中国人民解放空軍から弱体化されたと見られないためにも、とりあえず数だけは揃えて均衡を保つ必要がありました。これは運用的には賛否が分かれますが、インドでMiG-21のパイロットとして最も有名なアミット・ランジャン・ギリ元空軍中佐も「インド空軍は、パイロットを失い続けるという大きな犠牲を払いながらも、持っているものを活用したことは評価に値する」としており、戦略的に正しかったと考えられています。

 そして、今後の配備計画も狂う可能性がないわけではありません。インド空軍は2030年までに123機「テジャス」を保有し、MiG-21に加え、MiG-29も段階的に退役させる考えを示しています。しかし、最初の「デジャス」が納入されたのが2015年なのに関わらず、2023年までに初期モデルのMK.1が40機納入されたのみで、改良型の開発は国産エンジンの開発が難航していました。

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国産戦闘機として配備の始まった「テジャス」(画像:インド空軍)。

 2023年6月には、日米豪印戦略対話(クワッド)のなかで、主に中国に対するけん制として、GEが「テジャス」向けにF/A-18「スーパー ホーネット」やスウェーデンのサーブ「グリペン」にも供給するエンジン「F414」を提供することが決定しました。これにより「デジャス」はようやく改良型の供給目途が立ちましたが、依然として予断は許されない状態です。

【了】

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Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)

ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。

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