石油王の国で次に生まれるのは「武器王」? 兵器の“国産化”進める産油国 「ポスト石油」に日本はどう関与?
日本の軍用機が欲しい?
REACH-Sを開発したEDGEグループは、B-250を開発したカリダスや、ニマーを開発したニマー・オートモーティブなど、25社を超えるUAEの防衛企業を統合する形で、2019年に誕生した企業です。
誕生してからまだ日の浅いEDGEグループですが、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が2020年12月に発表した全世界の防衛企業の売上高トップ100で22位にランクインしています。
SIPRIで武器・軍事支出プログラムの上級研究員を務めるピーター・ウェズマン氏は、EDGEグループの躍進を「外国の防衛企業への依存を減らしたいというUAEの願望によるもの」と分析していますが、筆者はこれに加えて、原油の生産量が減少する未来をにらんだUAEの生存戦略によるところも大きいのではないかと思います。
かつての日本や現在の韓国などは、防衛産業の育成によって農業国から重工業国へと脱皮しました。UAEが「ポスト原油」体制下でも国家として生き残るため、防衛産業をテコにして重工業国への脱皮を図っているとしても、何ら不思議はありません。
日本はUAEとの間で、航空自衛隊が使用しているC-2輸送機の売却交渉を行っています。C-2のメーカーである川崎重工業がUAEへの輸出に向けたプロジェクトチームを立ち上げたのは2016年のことで、2020年11月にはUAEの求めに応じて不整地運用試験も行っていますが、いまだに売却交渉は成立していません。
UAE空軍はC-17輸送機を保有しており、C-2の必要性は必ずしも高くはありません。にもかかわらずC-2に高い関心を示しているのは、単に輸送機が欲しいというだけでなく、将来の重工業国化を目指す上で、日本の持つ航空技術力も欲しいという側面があると筆者は思いますし、本気でC-2のUAEへの売却を目指すのであれば、かの国が求めているであろう技術移転などを含めた、重工業国化へのサポートも必要になるのではないかと思います。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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