「貸した金返せという単純な話ではない」財務省の“自賠責ネコババ”で奪われた安心 被害者団体が抱える切実な課題
寝たきりで何もできない交通事故被害者 財務省はその財源を返し渋っている
「お金返ってきてそれで全てじゃない。そのお金をきちんと使った被害者救済事業ができることが大事なのです。5900億円というお金は、例えば療護センターの早期建て替えであるとか、いろいろな被害者救済事業、支援事業をきちんと実行するための問題を解決するための財源。特に、介護者なき後の被害者の問題。重要な問題であることを認識していただけたと思っています」
福田座長はこう語気を強めて話しました。
介護が必要な重度の交通事故被害者は1600人ほどで毎年推移しています。重度後遺障害を負った被害者は何十年もの長い間、後遺障害と闘っていかなければならず、その介護する人がいなくなってしまう「介護者なきあと問題」がクローズアップされています。療護センターは、その被害者家族の負担を少しでも減らすことを主な目的に開設されたのですが、その建物ですら老朽化に直面しています。
子どもが交通事故の重度被害者になった場合、介護の担い手である親も高齢になっています。赤澤副大臣との面会に同行した全国遷延性意識障害者・家族の会の横山恒副代表もその一人でした。
「(返済を)順調にしっかり加速させていくと、具体的なお言葉で言っていただけたなという気がしました」
脳に大きなダメージを受けることが原因で、意思を他人に伝えることができない遷延性意識障害は、自力で食事や排せつができません。胃ろうによるチューブを使った栄養補給や、たんの吸引が必要ですが、障害は病気ではないため入院し続けることはできません。介護分野で支援することになるのですが、介護でも医療行為を伴うため、看護師や資格を持った介護士が必要です。
しかし、こうした障害は脳梗塞や外傷でも起きるため、担い手がほとんどいません。家族がずっと介護を続けるケースも少なくありません。親がいなくなったらわが子はどうなってしまうのか。その“焦り”が介護で疲れた身体を、副大臣への面会に駆り立てます。
いつ完済するというあてもなく毎年、国交省と相談で返済額を決める財務省。毎年の返済額実績から考えると完済までに約100年以上。このまま続けていくのでしょうか。
【了】
Writer: 中島みなみ(記者)
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。
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