ライドシェア導入の「破壊力」 政府も認識する深刻な問題点 周回遅れ日本 どう動くのか

都市部は供給過剰で、バスや鉄道の利用減少の可能性

 ライドシェアはタクシーとの競合が課題と言われます。参入者が集中すると、そのバランスはどうなるのでしょうか。森屋氏の質問主意書では、ライドシェアの圧倒的な普及が数字で示されています。

「アメリカの各都市ではタクシーの数倍のライドシェア車両が登録され、2018年のニューヨークではタクシー1万3500台に対してライドシェア8万台、2019年のワシントンでは7200台に対して4万8600台、2018年のシカゴでは6699台に対して6700台、2020年のロサンゼルスではタクシー2364台に対し10万台、深刻な過当競争がタクシードライバーの生活を圧迫している」

 ライドシェア事業者は、ライドシェアを短期間で普及させる仕組みを持っています。解禁された国々では、タクシーより安い運賃で参入が始まりました。タクシーのような実質固定運賃ではなく、利用の多い時は高く、少ない時は安いダイナミックプライシングで、需要を一気に増やします。

 また、ライドシェアドライバーが運営事業者に支払う手数料を低く抑えることで、登録台数も一気に増やします。その結果、ライドシェアは急拡大しますが、タクシーに限らず、公共交通全体で影響を受けることになります。質問主意書にはこうあります。

「2019年、シカゴ市の発表した報告書では、2015年から2018年にかけてライドシェア配車回数が271%、実車走行距離が344%増加する反面、公共交通の利用が48%減少して交通渋滞が悪化した。道路の再舗装費用に1マイル当たり100万ドルの経費がかかり、市の財政に及ぼす悪影響にも言及している」

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首相あての質問主意書を起案した立憲民主党の森屋 隆参議院議員(参議院審議中継より)。

 海外での10年間は一見、旅客運輸のビジネスモデルの変革のように見えますが、問題は多いと、国際運輸労連の浦田 誠政策部長は指摘します。

「郊外や過疎地の運転手は概ね、稼ぐために都市部へ遠征するのが実態。平日は車中で寝泊りし、週末に帰宅するような事例が後を絶たない。(ライドシェア事業者が)最初は運転手を確保するために優遇するが、利用が安定すると、一方的に(ギグワーカーから徴収する)手数料を引き上げて利益を確保しようとするからだ。運転手は個人事業扱いなので、燃料費や保険料は自己負担なのに、(アプリケーションの)アルゴリズムによる労務管理で、一方的に運転手のアカウントを停止(=解雇)することもある。結果、ニューヨークでは85%が最低賃金以下の収入しか確保できない」

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