ライドシェア導入の「破壊力」 政府も認識する深刻な問題点 周回遅れ日本 どう動くのか

政府閣議決定「安全の確保、利用者の保護の観点から問題がある」

 海外でのライドシェアの弊害は、交通事故死者数など現れています。国会で示された2020年、日米の事故比較です。

・米国ライドシェア(Uber) 約6.5億回の輸送で、交通事故死者数42人。
・日本タクシー会社 約5.6億回の輸送で、交通事故死者数16人。

 運転者の自己責任が基本のライドシェアで、乗客の安全は守られるのか。質問主意書は岸田首相にこう質しました。

「運行管理や車両整備等について責任を負う主体を置かずに、自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態で、プラットフォーム事業者が配車を行う、いわゆる『ライドシェア』について、政府の見解を明らかにされたい」

 首相の回答はこうでした。

「お尋ねについては、2023年4月20日の参議院国土交通委員会において、斉藤国土交通大臣が『いわゆるライドシェアは、運行管理や車両整備等について責任を負う主体を置かないままに自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態を前提としており、安全の確保、利用者の保護等の観点から問題があると考えており、この考えは従来から変わっておりません』と答弁したとおりである」

 ライドシェアの運営事業者が運送事業者であるという考え方は、裁判などを経て欧州では一般的になりました。そのためドライバーの自己責任を基本とするライドシェアは、欧州ではほとんど姿を消しています。質問主意書の回答は岸田首相名で出され、全閣僚の閣議決定です。日本でも運行管理や車両整備を担う責任主体を明らかにすることは、ライドシェア導入のための最初の一歩です。

 岸田首相は11月の衆参両院で、ライドシェアについて次のように語っています。

「安全の問題、運転手の労働条件の問題、さまざまな課題について、規制改革推進会議で議論を行ってきた。デジタル技術を活用した新たな交通サービスという観点も排除せず、諸外国の先進的な取組も勘案しながら、年内に方向性を出していきたい。そして、できるところから始めたい」(11月28日参議院予算委員会)

 周回遅れでライドシェアを導入する日本で、先進導入国に学ぶ体制を築くことはできるのでしょうか。

【了】

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Writer: 中島みなみ(記者)

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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