西側戦車を生け捕ったら…とんでもない報奨金! 喉から手が出まくっているロシアの本音

「本当に支払うかは問題ではない」政府の本音とは

 ウクライナに供与されている西側兵器は、少なくとも2030年まで北大西洋条約機構(NATO)で第一線として活躍することになります。ロシアにとって、鹵獲を通じて兵器の装甲やそのほかの特性、部品などを研究することは、NATOの兵器とどのように戦い、対抗するにはどういった装備が必要なのか重要な研究材料になります。

 そういった意味ではウクライナ戦争は研究素材を手に入れる絶好のチャンスでもあり、ロシアにしてみればM1やレオパルト2ならどんな報奨金を出しても手に入れたいところでしょう。

 欧米がウクライナの強い要請にも関わらず戦車の供与に躊躇してきたのは、鹵獲されるリスクがあったのも理由のひとつです。ゆえにウクライナへ供与されたM1やレオパルト2は最新バージョンではありませんし、チャレンジャー2は鹵獲されないよう、とにかく前に出さない、孤立させない、放棄させない、さらには民間軍事会社の奪還特殊部隊まで用意するという、本当に使わせる気があるのか疑いたくなるような制約付きです。

 M2を鹵獲したロシア兵に勲章が授与されるというのは、それだけ論功に値するということです。もっともM2の報奨金がいくらで実際に支払われるのかは明らかではありません。

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ロシア軍によって鹵獲されたM2の車内には、ウクライナ軍兵士が読めるように内部の操作パネルにキリル文字の盤が簡易的に貼り付けられていた。

 しかしながら、報奨金は実際に出すつもりはなくても、兵士の士気を上げるという効果は期待できます。当局にしてみれば最も安価な士気向上策です。実際に砲撃や地雷、対戦車ミサイルや無人機が交錯する戦場で、敵戦車を破壊、鹵獲した功績を特定の兵士に認証することがどれだけ現実的でしょうか。鹵獲した戦車を操縦して味方戦線まで戻って来ない限り、確証を得るのは困難でしょう。古今東西において戦場の論功行賞は難しい問題です。

 しかし戦車生け捕りの危険性と年収10年分と比べたら、どう見ても割の良い稼ぎには思えません。実際に士気向上効果があったのか知りたいところです。

【了】

【写真】“生け捕られた”アメリカ製の戦闘車

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Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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