米軍が「戦闘車両のハイブリッド化」に本腰 “驚異的な燃料代”削減だけじゃない目論見…EVは?

アメリカ軍の燃料代はなんと年間1兆円

 アメリカ軍がハイブリッド化を推進するもう一つの要因と言えるのが、燃料消費量の削減です。

 実は、アメリカ軍による石油燃料の消費量は世界一だと言われています。どれだけ膨大かというと、年間40億ガロン(150億リットル)を消費し、燃料代だけで90億ドル(約1兆3500億円)にものぼるのだとか。なお、1個機甲師団を動かすためには、50万ガロン(190万リットル)の燃料が必要だとされています。そのため、前進する部隊に追随する補給部隊にはかなりの負担がかかりますし、その長く伸びた補給線は、大きな“弱点”にもなり得ます。

 さらに近年では、兵站面や金銭面の問題だけでなく、地球環境に与える影響も懸念されています。これだけの石油燃料を消費するアメリカ軍は、二酸化炭素排出量でも世界一です。アメリカは2030年までに二酸化炭素の排出量について40%削減を掲げており、こうした国家政策を実現する意味でも、最大の排出元であるアメリカ軍に対策が迫られていると言えるでしょう。

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テロや低列度紛争が課題となっていた1990年代に、迅速に展開可能な戦闘車両として誕生した「ストライカー」装輪装甲車。アメリカ陸軍ではストライカー・ファミリーを2050年代まで使用する計画である(写真:アメリカ陸軍)。

 ただ、そういうなら完全EV(電気自動車)化を考えてもよさそうですが、なぜハイブリッドなのでしょうか。

 残念ながら、現時点でEVには軍用車両に適さない弱点がいくつか存在します。たとえばEVはエンジン車ほど長距離を走ることができません。また、燃料の補充も給油が数分で終わるのに対して、充電は数時間必要です。将来的にEV技術が発展すれば解消される可能性はあるものの、現時点ではEVではなくハイブリッド電気駆動の方が戦闘車両に適しています。

【お! 自衛隊のテスト車?】これが防衛装備庁で研究中のハイブリッド装軌車です(写真)

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