「撃つ前にドカン」ロシア砲兵が恐れる「腔発」のリスクとは 北朝鮮の粗悪砲弾が原因?
類似の事故は総火演でも
SNSには、自動装填装置が故障したものの修理ができず、ウクライナ兵が必死に手動装填して使い続ける様子が投稿されたこともあります。屈強な砲員が簡単そうに砲弾を持ち上げていますが、155mm砲弾は約40kgもあり、むしろ大柄な砲員が狭い車内で作業するのは大変な重労働です。連続射撃ともなれば砲員の筋肉頼りで発射速度はがた落ちです。
火砲は重い砲弾を何十kmも飛ばすための装薬(弾丸を飛ばすため砲の薬室に詰める火薬)を扱います。可燃性の危険物であり、安全管理には万全を期さなければなりません。装備の不具合で重労働になるのも嫌ですが、疲労が溜まってくると取扱いも雑になりがちです。製品不良や取扱不良による腔発事故は最悪です。品質管理や安全管理は古今東西どの軍隊でも頭の痛い問題です。
日本でも2010(平成22)年8月20日、富士総合火力演習の訓練中に陸上自衛隊の90式戦車が、畑岡射場で砲身破裂事故を起こしています。腔発したわけではありませんが、砲身の先端40cmが吹き飛びました。1個小隊4両の行進射の際、砲身を左斜め前方に指向しながら前進中に、最後尾の戦車の砲口が土手に接触し、砲口内に土が入ったまま砲弾を発射したことが原因とされています。
この時、統裁部では砲口に草が付いているのに気が付いて、射撃中止を無線で命令しましたが、統裁部からの無線は当該車が直接受信できず、そのまま射撃に至りました。幸いけが人はありませんでしたが、その年の90式戦車の主砲射撃は中止されています。日本の自衛隊の安全管理は神経質すぎるという声もありますが、それでも事故はなくなりません。
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