日本製ミサイル“輸出”へ 元々アメリカ製 わざわざパトリオットPAC-3弾をなぜ“逆輸入”するのか

日本政府がアメリカへ「パトリオット」地対空ミサイルを輸出します。このミサイル、もともとアメリカ企業製ですが、なぜわざわざ“逆輸入”するのでしょうか。

輸出の背景にはウクライナが

 2023年12月22日、日本政府はアメリカへ「パトリオット」地対空ミサイルを輸出すると発表しました。同日の閣議で防衛装備移転三原則と運用指針を改定し、武器の輸出制限を大幅に緩和したことを受けての決定です。

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PAC-3を搭載した自衛隊の「パトリオット」地対空ミサイルシステム(画像:防衛省)。

 アメリカに輸出される予定の「パトリオット」ミサイルは、最新型のPAC-3であると考えられます。このミサイルはアメリカの軍需企業であるレイセオンが開発し、日本では三菱重工が主契約会社としてライセンス生産されているものです。元々アメリカで開発されたものをなぜ輸出しようとしているのでしょうか。

 それは、2022年2月からロシアによる侵攻を受けているウクライナへの支援に大きな関係があります。

 2023年12月現在、アメリカはウクライナ支援のための追加予算の議会承認が滞り、これまで供与していた武器弾薬がストップする可能性が出てきました。

 そこでアメリカでは、日本からの輸出によりPAC-3の補充を図り、余剰となったPAC-3とPAC-2をウクライナに供給するという計画が考えられています。この方針は既に2023年8月、アメリカのキャンプデービッドで行われた日米韓の首脳会談でバイデン大統領と岸田文雄首相の間で話し合われたそうです。

 日本これまで防衛装備移転三原則により、武器輸出に関しては大きな制限を課してきました。アメリカのライセンスで生産した装備品の「部品」に限って、アメリカやそれ以外の第三国に輸出を認め、完成品は不可としてきました。

 しかし、12月22日の閣議決定でこれが、ライセンス元の国へ完成品を含め輸出できるような運用に改正されたため、今回のような方法が可能になりました。なお、今回の改正でも第三国に関しての移転に関しては条件付きで「現に戦闘が行われている」と判断される国は除外としているため、改正後もウクライナに直接「パトリオット」を供給することはできません。

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