「撃つ前にドカン」ロシア砲兵が恐れる「腔発」のリスクとは 北朝鮮の粗悪砲弾が原因?
パワーを得ること それは爆発リスクと表裏一体
「オニオンブロッサム」と化した兵器は腔発事故の怖さを伝えていますが、かつては蒸気機関車でもボイラーの爆発事故が起こり、ショッキングな姿を見せました。蒸気機関車のボイラーが爆発すると煙管がバラバラに露出し、「触手」が生えたような異形をさらすことがあります。現代では考えられませんが、蒸気機関車の黎明期の19世紀末~20世紀初めには頻発し、多くの写真が残されています。水蒸気が、戦車にも劣らない強靭な蒸気機関車のボイラーを引き裂く力を秘めていることに驚かされます。
筒内に圧力をかけ、火薬の威力で中に詰めた砲弾を飛ばすのが大砲、火力で水蒸気を発生させ、その力で動くのが蒸気機関車。機能は別物ですが基本原理は同じで、どちらも圧力が高いほど強い出力を発揮できます。しかし爆発リスクと裏腹であり、高性能と安全性は常に危うい技術的バランスをとってきました。
とはいえ火砲や蒸気機関車に限ったことではなく、現代の安全や安心は、過去の事故や犠牲の経験を重ねたトライアンドエラーの繰り返しで成り立っています。規制や規則は煩く感じるかもしれませんが、その背景があることを忘れないようにしたいものです。矛盾するようですが戦時だからこそ「安全第一」なのです。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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