「国際列車ブーム」の欧州で「ボッタクリ国家」にブーイング!? 「遠回りイヤなら金払え」鉄道の追い風に壁 高まる批判

環境にやさしい鉄道がEUで見直され、国際列車の事業が加熱しています。そのなかで、「線路使用料」が高額な国が不評を買っているようです。

高まる“ドイツ国鉄”解体への圧力

 このようにEU鉄道網の中で「お高く止まっている」印象のあるドイツですが、そのあり方でゴタゴタの渦中にあります。

 ドイツ鉄道の列車運行とインフラ管理は、それぞれグループ内の別会社が担っています。ですが、グループ内の結びつきは強く、実際にはドイツ政府が全株を保有している一つの大きな国営企業のような状態です。

 そんな独占状況に風当たりが強まっており、EU内の競争促進の旗を振る欧州委員会はもちろん、足元のドイツの連邦カルテル庁やドイツ独占委員会といった当局まで「苦言を呈する」事態になっています。ドイツ当局としても「自国優先主義」を放置しているとみられたくないわけです。

 具体的には、ドイツ鉄道の上下分離を徹底したほうが良いという圧力が高まっています。つまり「ドイツ鉄道の完全解体」。ただ政権与党の中道左派・ドイツ社会民主党(SPD)や、政治に大きな影響力を持つ労働組合が強く反対しており、現時点での実現はなかなか困難です。

“国鉄”の解体には、「高すぎる通行料」の是正につながるという期待もあります。「ドイツ経由で最短経路の長距離国際列車」が隆盛するかどうか、EU内でドイツ内政への注目が高まっています。

【了】

【画像】えっ…!これが浪漫あふれる「ヨーロッパの国際列車」です

Writer:

アーティストとして米CNN、英The Guardian、独Deutsche Welle、英BBC Radioなどで紹介・掲載される一方、鉄道ジャーナリストとして日本のみならず英国の鉄道雑誌にも執筆。欧州各国、特に英国の鉄道界に広い人脈を持つ。慶応義塾大学文学部卒業後、ロンドン大学SOAS修士号。

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コメント

1件のコメント

  1. 「東の隣国オーストリア」

    ここだけを見ると、スイスの話かと思います。ドイツの東隣と言えるのは、ポーランドとチェコまでではないでしょうか