「どこでもいける空港の管制塔」メリットがすごい! どのようなときに役立つのか

「移動式管制塔」のメリットは?

 2024年2月に開催されたシンガポール航空ショーで、「r-TWR Deployable」のイメージビデオが流されていましたが、トレーラーやC-130輸送機で運ばれた後は、3人による30分間の作業で展開でき、マストは最大25m延びるということです。

 両者の移動式管制塔を比べると、空自の移動式管制塔は直接的に航空機を見ることができるだけに、発着機の詳細な動きを把握できそうです。これに対して、r-TWRは展開が簡便に見受けられます。

 サーブがこうした機材を開発するのは、有事の際、公道からでも戦闘機を発着させるのに合わせたためと思われます。公道の脇には戦闘機を隠す森などもあるために、できる限りマストを高くして視界を確保して管制塔としての役目を果たし、なおかつ、マストという小屋型のシェルターより高く上げられるうえに、細く敵に見つかりにくい形を採用したと考えられます。
 ちなみに、航空自衛隊でも実際に移動式ラプコンの方を2011年3月の東日本大震災後、宮城県の松島基地で運用した経験があります。

 r-TWRについては、シンガポール航空ショー会場で出展していたサーブへ、2024年1月に発生した能登半島地震の復旧支援を例に挙げ民間空港でもr-TWR Deployableを使うことができるか尋ねたところ、「できる」とのことでした。

 能登半島地震は、民間の能登空港の滑走路が損害したものの、同じ石川県内の空自小松基地が救難物資輸送の集積・中継地となりました。能登半島地震と異なり、もし、被災地の近くに被害の軽い空港や基地がなければ救援も滞ると思われます。こうした際の備えに、移動式管制塔は選択肢の一つと言えるでしょう。

【了】

【コレが管制塔?】「よく見るやつ」とはぜんぜん違う移動式管制塔外観

Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)

さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。

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