日本もついに上陸?「トコジラミ」大騒動は海を渡るのか 先を行く国々の対策 迫る“最悪の事態”を食い止めろ!
「仏みやげはトコジラミ」だけは避けたい政府
懸念されているのは、2024年夏にパリで開催されるオリンピックです。世界中から集まった観戦客や関係者が、自国へトコジラミを一斉に持ち帰る「最悪の事態」だけは避けたいと、仏政府もトコジラミの駆除に本腰を入れています。
では、パリでの大騒動から5か月が経ち、英仏の鉄道運行会社の最新のトコジラミ対策はどうなっているのでしょうか。
清掃と探知犬以外に何か新しい対策を取っているのか、パリ地下鉄を運行するパリ交通公団(RATP)とフランス国鉄(SNCF)、ユーロスター、そして、英ロンドン地下鉄などを運行するロンドン交通局の4社の広報に「最新の対策を教えてください」と問い合わせたところ、期日までに1社も返事をもらえませんでした。全社の広報が沈黙を貫くところに「避けたい話題」だという後ろめたさが透けて見えます。
一方、フランスと地続きの隣国ドイツのドイツ鉄道の広報にも同じ質問を送ってみたところ、「ドイツ鉄道ではトコジラミの問題は一切発生していません」と、即日返事がありました。
「トコジラミの脅威におののく日本に、フランスと地続きにもかかわらず電車のトコジラミ発生を防げている秘訣を教えてください」と再度質問をしたところ、「ただ単に今のところトコジラミは発生していないのです。このままの状態が続くように願っています」と謙虚な答えが返ってきました。
ロンドン市長のサディク・カーン氏は2023年10月のパリSNS騒動のあと、「パリから何か学べる教訓はないか調査しています」と発言していますが、もしかしたら、ドイツ鉄道に学べることも何かあるのかもしれません。清掃の仕方・頻度なのか、それとも座面など車内の材質なのか、研究の余地がありそうです。
【了】
Writer: 赤川薫(アーティスト・鉄道ジャーナリスト)
アーティストとして米CNN、英The Guardian、独Deutsche Welle、英BBC Radioなどで紹介・掲載される一方、鉄道ジャーナリストとして日本のみならず英国の鉄道雑誌にも執筆。欧州各国、特に英国の鉄道界に広い人脈を持つ。慶応義塾大学文学部卒業後、ロンドン大学SOAS修士号。
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