現役の空母=「年中無休の観光地」どうしてそうなった!? 再び動く日は来るのか 今やSNSが“主戦場”
アメリカ海軍で博物館として保管されている戦艦が、華々しく“再稼働”を果たしました。同じように、現役でありながら既に博物館や記念艦状態の艦艇はタイ海軍にも存在。それが空母「チャクリ・ナルエベト」です。
予算不足! 満足な活躍をできない空母!
2024年3月21日、アメリカで博物館として保管されているアイオワ級戦艦の2番艦「ニュージャージー」が、フィラデルフィア海軍工廠の乾ドックに入ったことが発表されました。タグボートに引かれての移動ですが、実に25年ぶりの出港ということで、式典まで行われ、話題となりました。
しかし、世界には現役でありながら“博物艦”状態の艦艇も存在します。タイ海軍に所属する空母「チャクリ・ナルエベト」です。
同空母は、バサン社がスペイン海軍向けに建造した軽空母「プリンシペ・デ・アストゥリアス」の縮小改良型といえるものです。1996年1月に就役すると、タイ海軍初の空母、かつ東南アジアで初めてのジェット戦闘機運用が可能な新造空母として注目を集めました。
就役から30年も経っていない空母ということで、本来ならば、まだタイ海軍艦隊の中核に位置してもおかしくない艦ですが、就役期間のほとんどを母港のあるラヨーンでほぼ停泊して過ごしています。そのような事態になってしまった理由は、就役直後の1997年7月より始まったアジア通貨危機でした。
この通貨危機はタイを震源として発生しました。そのため、タイは深刻な不況となり、そのあおりを受け、軍隊の予算も大きく削減されることになります。空母の運用はサイズの大小の違いこそありますが、通常の船員のほかに搭載する艦載機のパイロットやその整備人員、さらに諸々の維持費などもかかることから、かなりの資金が必要な艦艇のひとつです。
そうした“金食い虫”ともいえる同艦を頻繁に動かすわけにもいかず、同艦が外洋に出る任務は激減。その回数は月に1日程度になってしまいました。
さらに、同艦にとって逆風となったのが、艦載機として格安購入したスペインのV-8S「マタドール」、アメリカでいう「ハリアー」垂直離着陸戦闘機の問題です。
この機体、格安だったのには理由がありました。購入時すでに、かなり老朽化しており、機体寿命もそう長くないとみられていました。加えて、そもそも活用する場所であるはずの空母がほとんど動かないということで、2000年代中期には早々と運用を停止。これにより「チャクリ・ナルエベト」は事実上ヘリ空母になりました。
そのため、同艦はまともな任務につくこともなく、観艦式に参加する程度の扱いになってしまいます。
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