空中ガソリンスタンド!? ついに戦略爆撃機も利用「民間の空中給油機」知られざるビジネスの可能性
新興企業も登場する有望市場か?
もっとも、これら民間の空中給油機は、通常の軍所属機と同じように使うことはできません。一番の理由は民間企業の所有機を民間人が飛ばしているため、そのような機体を軍事作戦に使うことができない点です。そのため、空軍に属するすべての空中給油業務を民間企業に移管ないし肩代わりさせることはできず、今回のような訓練での利用などに限定されます。
ただ、アメリカ空軍としては、一部の任務でも民間企業が肩代わりしてくれることで、限りある空中給油機のリソースをよりレベルの高い軍事作戦などに集中することができることから、そのメリットは予算面以上の大きなものがあるのでしょう。
今回の民間空中給油について、燃料補給を受けたMC-130Jが所属する嘉手納基地のレーガン・マリン中佐は「オメガの民間給油機は、我々の給油機に能力以上の需要が発生したときに、この地域で活動する航空機搭乗員たちに任務支援を受けられる別の選択肢を提供します。再びオメガと仕事ができるのが待ちきれません」とコメントしています。この内容を鑑みると、アメリカ空軍が副次的な手段としてのオメガ社の活躍に期待しているように感じられます。
なお、民間企業側も、この種のサービス提供には一定の需要が将来も見込めると判断したのか、オメガ社以外の新興企業も誕生しています。
たとえば2020年には、アメリカのメトレア社が民間空中給油サービスを行う「メトレア・ストラテジック・モビリティー」(MSM)という部門を立ち上げています。同社はシンガポール空軍から退役したKC-135R空中給油機を4機購入しており、すでに各種の訓練でアメリカ空軍や海軍の機体への給油業務を実施しています。
今後はアメリカ空軍の給油機不足と民間企業の業務拡大によって、民間所有の空中給油機というものを一般人が見かける機会は増えるでしょう。ひょっとしたら日本国内でも見られるようになり、決して珍しい存在ではなくなっていくのかもしれません。
【了】
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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