「駅窓口をほぼ全廃します」 過激コストカット案に「窓口難民」が猛反発! 日本以上に“社会問題化”した英国「切符販売」の顛末

JRの駅で「みどりの窓口」がどんどん減っており、残った数少ない窓口には長蛇の列。これではきっぷを買えないと「窓口難民」から不満が噴出していますが、遠く離れた英国も、それ以上の事態に揺れていました。

「番犬」の活躍で、「窓口ほぼ全廃案」は急転直下の結果に

 日本ではあまり耳慣れない「ウォッチドッグ(Watchdog)」という存在も、「RDGの決断には何一つ賛成できない」と声明を出しました。

 ウォッチドッグとは、直訳すると「番犬」という意味ですが、英国にはその名の通り、各種商品やサービスが正しく提供されているか、名もなき消費者や利用者の小さな声に耳を傾けて、番犬のように監視する団体がいくつもあります。民間企業のサービスだけでなく、政府機関にさえも苦言を呈することができるのです。

 また、各種サービスには事前に、どのウォッチドッグの決断に従わなくてはならないかが法に明記されています。例えば今回のように、英国の鉄道会社が、その販売窓口の営業時間や提供サービス内容を変更するには、公共交通機関利用者の権利を見守る「トランスポート・フォーカス(Transport Focus)」と、ロンドンの公共交通機関利用者の権利保護に特化した「ロンドン・トラベルウォッチ(London TravelWatch)」という2つのウォッチドッグの同意を得なくてはならないと定められているのです。

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ロンドン地下鉄の自動券売機((c)Transport for London)。

 2団体に寄せられた抗議は合計75万件にもおよびました。「個人からも業界団体からも辛辣な意見ばかりが届いた」とのこと。嵐を巻き起こした「窓口ほぼ全廃案」はその発表から約4か月後、ウォッチドッグの却下をもって、急転直下、廃案になりました。

 驚いたことに、トランスポート・フォーカスは運輸省が後援する公共団体で、ロンドン・トラベルウォッチは地方自治体が設けた組織です。いずれも半分「行政当局」とも言えるようなこうした団体が、単なるお飾りではなく、きちんと市民・国民の声に耳を傾け、政府やロンドン市長のお墨付きの案を一転、廃止に追いやったわけです。

 とりあえず一安心といったところのイングランドですが、窓口廃止を主導している運輸省とRDGは障害者ニュースサービスの取材に「有人切符窓口を今後も閉鎖しないとは言い切れない」と発言しており、火種はまだまだくすぶっているようです。各鉄道会社の赤字問題が改善しない限り、再燃の可能性は高いのではないでしょうか。ウォッチドッグが今後も押し戻せるのか、興味深いところです。

【了】

【写真】これが券売機や改札機に対応しない「きっぷ」です

Writer:

アーティストとして米CNN、英The Guardian、独Deutsche Welle、英BBC Radioなどで紹介・掲載される一方、鉄道ジャーナリストとして日本のみならず英国の鉄道雑誌にも執筆。欧州各国、特に英国の鉄道界に広い人脈を持つ。慶応義塾大学文学部卒業後、ロンドン大学SOAS修士号。

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