京葉線だけの問題か? 快速の“大幅減”地域に厳しいダイヤ改正が断行される根本原因 議論に欠落した視点

通勤快速・昼間以外の快速がほぼ全廃というダイヤ改正が行われた京葉線をめぐり、改善を求める地域とJR東日本との綱引きが続いています。なぜJRは地域に厳しい変更を行ったのか。元鉄道会社社長の筆者は、議論に欠落したポイントを指摘します。

なぜ地域を不便に? 京葉線で採られた“手法”

 では、運輸収入だけで鉄道を維持し投資をするために、収益を増やす戦略は何が考えられるでしょうか。大きく以下に分けられます。

(1)コストを下げる

・設備投資を絞る:設備や車両の更新を延ばす、設備を減らす(安全確保のため限度があり、設備撤去にも投資が必要)

・運行費用を下げる:列車キロを減らす。減便・途中打ち切り(客離れの恐れを伴う)

(2)客単価を上げる

・運賃を上げる:全国一律運賃のため難しく、客離れの恐れもある。

・人キロを伸ばす:高速化・直通化などで遠距離通勤・通学を誘発する。

・付加価値:特急・グリーン席など運賃以外の料金を取る

(3)旅客を増やす

・シェアを拡大:他線区・他モードから需要を移転させる(総武線が減れば収入増は相殺されてしまう、アクアライン対抗は厳しい)

・市場を拡大:利便性を高め沿線価値を引き上げ開発を促し駅勢圏人口を増やす(時間がかかる)

 京葉線では、通勤快速の君津・勝浦・成東直通で利便性が向上しましたが、JR東が得られるのはあくまで運輸収入のみであり、宅地開発などの利益はデベロッパーが手にしています。利便性向上の小さく無い投資に対し収入増は限られ、余裕が少ないためか、コロナで輸送量が減った2022年に通勤快速2本が各駅停車に置き換えられました。

 千葉県のデータによるとコロナ禍後の2023年、他線は通過人員が前年増となっている中、京葉線はさらに落ち込んでいます。そこで、どのような手を取るか。

Large 20240513 01
千葉市などが行ったダイヤ改正の影響アンケートチラシ。回答受付は終了している(画像:千葉市)。

 線路上はつながっている新宿直通も考えられますが、千葉県の調査では複々線化に多額の投資が必要で収支は厳しいと見られています。他方、「他線区・他モードから需要を移転させる」施策をとると、総武線の旅客が減りJR東全体の運輸収入は増えません。また、房総各地に直通するアクアライン高速バスへの対抗は厳しいです。

 収支の回復を早期に図りたいとなると、列車本数は増やせず、快速を各駅停車化し速達性を失う事と引き換えに混雑を平準化し、途中駅の利用を増やす策を採ったと推察されるのです。

【知ってました?】京葉線の利用者数「一人負け」の状況(画像)

最新記事

コメント