幻の旅客機計画「797」、復活なるか!? 苦境のボーイングに転機 可能性はゼロじゃない!
「2035年まで新型機開発はしない」方針から転換なるか
ただし、販売へ攻勢をかけるにあたり、A321XLRへの対抗機種がなければ、100席以上の小型機から400席クラスの大型機までの「切れ目のない」機種展開に穴が開くことになります。A321XLRに唯一対抗できると思われるのは、アラスカ航空事故を起こした「737MAX」と同シリーズの737-10(航続距離6100km、188~230席)ですが、こちらは、市場にまだ投入されていません。
このため、ボーイングが新経営陣の下で社内改革が進めることができれば、2025年以降、そう遠くない時期にNMAへ再びゴーサインが出る可能性はゼロとは言い切れないでしょう。カルフーン現CEOは2022年後半、20~30%の燃費向上が見込めない限り2035年頃まで新型機(NMA)の登場はない、と投資家に説明していましたが、今後こうした技術的な進展に目途が付けば、ゴーサインが出る確率はより高まると考えられます。
反面、野心的な機体を狙えば、当然開発のリスクは大きくなります。現状、同社が最も直近で新規開発をした「787」では、リチウムイオンバッテリーなど新機軸を取り入れたために苦難がともいました。
もし将来の「797」が開発されるとしたら、こうした予測されるトラブルを克服し、A321XLRを上回るセールスポイントへどのような新機軸を打ち出すかも、新経営陣の下で改めて意見の統一を図らなければなりません。
それだけに、「NMA開発再開」のアナウンスまでには、超えなければならないハードルが多々あると思われます。しかし、難しい分、再びゴーサインが出たなら、それはボーイングが反転攻勢に立ち上がった合図といえるでしょう。そして、日本にとっては、767、777、787に続く生産分担獲得の機会になり得えます。それだけに、NMAの行方はまた関心を集めるかもしれないのです。
【了】
Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)
さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。
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