伝説の珍兵器「パンジャンドラム」とは? 80年前の暴走“自爆ドローン”!? 本気だったのか欺瞞工作か
大失敗兵器としてそして珍兵器としても歴史にその名を残す「パンジャンドラム」。この兵器は本当に、大真面目に作られたものなのでしょうか。
イギリスの伝説的無人兵器?
2024年6月6日は、第二次大戦中に連合軍がドイツ占領地に対して行った上陸作戦である「ノルマンディー上陸作戦(ネプチューン作戦)」から80周年となります。
海外では単に作戦開始日時を表す「D-Day(Dデイ)」とも呼ばれたりもしますが、この戦いに、とある“無人兵器”が投入される可能性がありました、イギリスで考え出された「パンジャンドラム」と呼ばれる兵器です。
2024年現在、“無人兵器”といえば、ロシアによるウクライナ侵攻などでよく見られる自爆ドローンや無人偵察機など遠隔操作が可能な兵器を想像しますが、この兵器はもっと単純です。爆薬を詰めた本体を直径3mの車輪が挟み、ロケット推進の力で転がるというもので、その見た目を端的にいうと「ボビン状の巨大車輪爆弾」です。
当時、ドイツへの反攻作戦のために上陸しようとした、フランスのドーバー海峡沿岸部には、「大西洋の壁」と呼ばれたトーチカ群がドイツ軍によって建設されており、その破壊のために考え出されました。
同兵器の開発が試みられたのは反跳爆弾や対潜迫撃砲「ヘッジホッグ」など、画期的な発想の兵器を開発していたイギリス海軍省の多種兵器研究開発部(DMWD)が担当しました。当時、海軍中尉だった小説家のネヴィル・シュート・ノーウェイも開発に関わっており、「パンジャンドラム(Panjandrum)」の命名は彼が行ったといわれています。
攻撃方法は至極単純で、取り付けられた計70個の無煙火薬製ロケットが一斉に点火され、上陸用舟艇から射出されると、1tほどの爆薬を搭載した「パンジャンドラム」が100km/hほどのスピードで爆走。艦砲やロケット弾での破壊が難しい、トーチカや沿岸砲台など、コンクリート製の構造物に突っ込み自爆して粉砕するというものです。
なんといっても射出後は人間の操作を必要としないのが魅力で、上陸予定の友軍将兵の人命にも配慮したものでした。爆薬を搭載し、突っ込む様はある意味では現在使用されている自爆ドローンのようでもあり、まさに無人兵器のさきがけとも呼べるものでした。
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