あまりに斬新ルックス!「水素をつくる船」の現在地 実証船が東京に登場 “チーム日本”始動か?

夢の水素“自力供給” まずはヨットから

「ウインドハンター」は、船上で水素を生産できるうえに既存のインフラが使えるという強みを生かし、地方や離島にも水素エネルギーを供給することが可能です。加えて日本近海を航行するだけで水素エネルギーが手に入るようになれば、海外からの輸入に頼ることなく電気を生み出しモビリティを動かすことができます。

 2050年までにグループ全体のGHG(温室効果ガス)実質ゼロを掲げている商船三井は、同船の技術を活用し、環境に優しい水素サプライチェーンの構築を目指しています。こうした計画の第一歩として、まずは「ウインズ丸」を用いた実証が行われているわけです。

 同船は水中タービンや水電解装置、水素添加・脱水素反応装置、燃料電池、電動モーターなどが搭載され、小型ヨットではあるものの「ウインドハンター」で構想されている水素の生産とMCHの貯蔵を担えるようになっています。商船三井は2021年に長崎県で行った実証実験で、その一連の流れを成功させています。

 ウインドハンタープロジェクトは東京都が行う「東京ベイeSGプロジェクト」に採択されおり、2025年初頭から2026年3月にかけて、東京湾や周辺海域にて実船上でのグリーン水素生産、MCHの船上貯蔵、海の森競技場での陸揚げ、水素の供給といった一連の流れが実証される予定です。

 今回の「ウインズ丸」の東京湾における実証実験では、同船の水素生産機能をさらに強化。具体的には発電機を増強するとともに、MCHの貯蔵タンクを容量1リットルから最大40リットルまで増やすことや、船尾側の蓄電池を撤去し、代わりにリチウムイオン電池を搭載することを検討しています。

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実証船「ウインズ丸」(深水千翔撮影)。

 島所長は「商用船は2030年を計画している。その前に2026年 から2027年ぐらいに実証船を作っていきたいと考えている。現在その辺りの詳細な設計をエンジニア会社と進めており、年内に何らかの形で出していきたい」と話していました。

 そして、開発中の「ウインドハンター」実証船は70mくらいの大きさで、10万重量トン型バルカー「松風丸」(10万422重量トン)への搭載実績がある「ウインドチャレンジャー」と呼ばれる風力推進装置が複数本設置される予定です。これは。状況に合わせて角度や高さの変更が可能な4段階の伸縮機構(最大高さ約53m)を備えた「硬翼帆」のひとつで、燃費の削減効果が確認されています。これを本格的に推進用として使う異形の船が、近く姿を現しそうです。

【了】

【ついに公開】これが「水素をつくる船」の中身です(写真)

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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