歴史を変える大発明だった!?「ヘリコプターの元祖」だったかもな変態機 まさかの後世に大きな影響も

トルクを打ち消す答えを出した機体

 一方、ジュロヴェツ技術中尉が開発を担当したPKZ-2と呼称される乗りものは、PKZ-1よりは先進的で、3本の放射アームそれぞれに120馬力のエンジンを取り付け、中央にトルクを打ち消すための二重反転ローターを設置。その上に観測員を乗せるためのゴンドラを配置するという極めて合理的な飛行機械でした。

 PKZ-2は現代のヘリコプターのように自由に空を飛び回るというわけではなく、フワリと浮かんで上空まで飛びあがり、そこでホバリングして目視で敵情など必要な情報を収集し終わると、地上の作業員が空から垂れ下がった紐を引っ張って機体を降ろすという構造で観測気球などに近い運用法になっています。3本の脚と機体中央部には、着地時の衝撃を和らげるゴムのボールが取り付けられており、安全性も考慮されていました。

 同機は1918年4月に試験飛行を開始。5月からは無人での運用テストも行われました。6月には、空軍関係者に向けてデモンストレーションが行われましたが、ここでエンジントラブルにより不時着。機体が損傷してしまいます。

 その後1918年11月に試験を再開する予定となっていましたが、時すでに遅し、同月中に第一次世界大戦は終結。オーストリア=ハンガリー帝国は敗戦国になったため、機体はイタリア軍が接収してしまったと言われています。

 PKZ-2は人を乗せて飛行した記録が確認できず、恐らく有人飛行はしていない模様です。しかし、この機体に採用された回転トルクを打ち消す技術や、ホバリングという技術が、後にヘリコプターの誕生へとつながっていくことになっていきます。

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世界初の実用に耐えうるヘリコプターであるフォッケウルフ Fw 61(画像:連邦公文書館)。

 もし、オーストリア=ハンガリーで誕生したPKZ-1やPKZ-2が実戦に投入されていたら、現代のヘリコプターの形状は変わっていたかもしれません。

【了】

【形がスゴく…変?】これが、エアバスが開発した異形な爆速ヘリコプターです(写真)

Writer: 凪破真名(歴史ライター・編集)

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

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