夢のまた夢が現実に? 日本の防衛装備品「アメリカ輸出」なるか “脱・受け身”への茨の道を聞いた【前編】

いわゆる「安保3文書」に基づき、現在日本では防衛産業振興を含めた防衛力の強化が急ピッチで進んでいます。そんな中、三菱電機が海外企業と連携して積極的に市場を開拓しています。その「真意」について聞きました。

障壁が高いアメリカ市場への参入 それを乗り越える方策とは?

 アメリカに装備品を輸出する、つまりアメリカ市場に参入することには大きな障害があります。それこそが、洗井事業部長も指摘されていた「巨大なアメリカの防衛産業」の存在です。そこで、それを乗り越える方策として三菱電機が選択したのが、アメリカ企業との提携だといいます。

Large 20240920 01
洗井昌彦 三菱電機 執行役員 防衛・宇宙事業本部副事業本部長 兼 防衛システム事業部長(画像:三菱電機)。

「やはり、国防総省としてもアメリカ企業の製品を使いたいと思っているので、アメリカ市場への参入は一筋縄ではいきません。そこで、私たちが進めているのがアメリカ企業との業務提携です。たとえば、三菱電機が作ったコンポーネントをアメリカの企業に提供するというもので、これはRTX社とのSPY-6の案件が好例です。あるいは、アメリカ製のシステムであってもそれをそのまま導入するのではなく、我々の技術なども織り交ぜた新しいものを共同で作り上げるといったやり方もあります」

 さらに、日米共同開発という方式もあると洗井事業部長は指摘します。そこで思い起こされるのは、かつて日米で共同開発した弾道ミサイル迎撃用の「SM-3ブロック2A」の例です。この時、日本は弾頭部を収めるミサイル先端部のノーズコーンと呼ばれる部分などの開発を担当しました。しかし、洗井事業部長はこれと異なる形での「日米共同開発」を模索しているといいます。

「『SM-3ブロック2A』は、決められた枠の中で予算などを分担し、日本としてどこを担当できるかというプログラムであり、開発構想の段階から参加するというものでありませんでした。私たちが考えているのは、日米共通の新しい装備品を日米の企業が『企業発』で提案していくというものです」

 これまでのように、防衛省から出された装備品に関する要求に基づいて装備品を開発するのではなく、日米企業がタックを組んで、先行的に各種の装備品を開発して、それを自衛隊やアメリカの国防総省に提案していくということです。

 すでに、三菱電機では2024年7月9日にノースロップ・グラマン社との間で「日本・米国向け防衛装備品に関する覚書」を締結していますが、これには「電子戦システム、レーダー、通信システム等」の分野に関して、共同開発した装備品を日米防衛当局に対して提案するための協業を進めていくことが合意事項に含まれているといいます。

 これまで、日本の防衛産業では日本の限られた市場のみを主要な取引先としてきました。そのため、アメリカを含めた海外市場への参入はハードルが高いのも事実ですが、しかし海外企業との提携により、その壁を乗り越えようとしているのが、三菱電機の企業戦略というわけです。

【了】

【ここにもあそこにも!】三菱電機が手掛けてきた防衛装備品の数々(画像)

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  2. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  3. 飛行中の「日の丸特別機」に粋なサプライズ! 天皇皇后両陛下を“最新ステルス戦闘機”がお出迎え
  4. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  5. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号
  1. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  2. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  3. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  4. 「“再有料化”でいいから4車線化して」→普通車280円になって1年 利用者負担で勝ち取った“効果”あきらかに 八木山バイパス
  5. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”