都営大江戸線なぜ「うるさい」? 建設後押しの“2大特徴”が騒音の原因に ただし改善も進行中

リニア地下鉄も「騒音」の遠因に

 リニア地下鉄はモーターで車輪を回転させるのではなく、軌間に設置したリアクションプレートと車体の電磁石を反応させて推進力を生むため、鉄輪では難しい急勾配に対応可能です。また、モーターを搭載しないため台車の自由度が高く、半径100mの急曲線も走行可能です。

 この結果、既存の地下施設の間を縫うようなルートが取れるようになり、新宿、飯田橋、六本木、汐留などに駅を設置することで、需要喚起にもつながりました。つまり大江戸線は小型地下鉄・リニア地下鉄を採用したからこそ実現した路線です。

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「リニア地下鉄」の大江戸線は、車両搭載の電磁石と、線路のリアクションプレートを反応させて走る(乗りものニュース編集部撮影)。

 しかしトンネル断面が小さくなれば、シールドトンネルと車体の間隔も小さくなり、音は反響するようになります。また、鉄道の台車は車輪の向きが固定されているため、カーブでは曲線のレールと車輪の摩擦できしみ音が発生し、急曲線ほど騒音が大きくなります。つまり大江戸線の特徴は、そのまま騒音の発生要因になるのです。

 そこで東京都交通局は2020年度から2022年度にかけて、曲線走行時にレールに合わせて輪軸を動かすことで騒音を低減する「試験用操舵台車」の効果や耐久性を検証。良好な結果が確認できたことから営業運転を想定した操舵台車の製造に着手し、2024年度から一部の車両に試験導入し、営業線での営業評価を行う予定です。

 大江戸線には開業時から、輪軸を支持するゴムの前後支持剛性を下げることで、カーブに沿って輪軸が自動的に曲がる「自己操舵台車」が導入されていますが、構造上、可動範囲が限られます。そこでカーブ通過時に車体と台車の間に働く力を、てこの原理を用いたリンク機構で輪軸に伝え、カーブ内側の車軸を短く、外側を長くすることで線路と車輪の角度を減らす「リンク式操舵台車」が開発されました。

 2015(平成27)年に開業した、大江戸線と同じリニア地下鉄の仙台市地下鉄東西線は2000系電車にリンク式操舵台車を導入しており、大江戸線の試験もこの技術をベースにしています。

 また、リニア地下鉄以外でも、東京メトロは2011(平成23)年登場の銀座線1000系、2016(平成28)年登場の日比谷線13000系、2019(平成31)年登場の丸ノ内線2000系に、輪軸の片方をモーターに接続し、片方をリンク機構で動かすリンク式操舵台車を導入しています。

 この3路線は建設年次が古いため、大江戸線ほどではないものの急曲線が多く存在しますが、操舵台車の導入で騒音はかなり改善した印象です。大江戸線でも騒音問題の救世主となるのか、間もなく始まる実地試験に注目です。

【了】

【図解】騒音減らす「操舵台車」のメカニズムを図で見る

Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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