「ルパン三世の愛車」チェンジは苦肉の策だった!? じつはクリーム色じゃない“激レア回”も
ルパン三世の愛車=大塚康生さんの愛車に
宮崎 駿さんと高畑 勲さん、このふたりが演出を担当するようになってからルパン三世の愛車はベンツからフィアットへと変化します。初登場は第16話「宝石横取り大作戦」で、『カリオストロの城』とは車体色が違い、薄い水色のフィアット500Fを不二子が運転しています。以降シリーズ最終回までこのクルマをルパン三世が愛用することになりました。
ベンツからフィアットへと愛車が変わった理由はふたつ。ひとつは演出方針の変更。もうひとつは複雑な形状のベンツSSKを描けるアニメーターは、大塚さんと青木雄三さんのふたり以外にいなかったからです。じつはこのフィアット500Fこそ大塚さんの当時の愛車であり、制作スタッフが作画をする上でわからないところがあれば、スタジオの駐車場へ見に行けば済むという作画上の大きなメリットがありました。
大塚さんのフィアット500Fは西武自動車が輸入したクルマで、日野コンテッサを2台乗り継いだ後に買ったのがこの車両でした。大塚さんはフィアットに対する印象を「排気量の大きなコンテッサよりも良かった」と述べており、晩年に筆者(山崎 龍:乗り物系ライター)が大塚さんの自宅を訪れたときも、作りかけのフィアットのプラモデルが自室にありました。こうしたことから、このクルマは手放したあともお気に入りの1台だったようです。
その後のシリーズでルパン三世は、アルファロメオ・グランスポルト・クワトロルオーテ、スバル・サンバー、シェルビー・コブラ、スバル360など、さまざまなクルマを乗り継いだ末に、『Part4』からは再びフィアット500Fを愛用するようになっています。
こうして見てみると、大塚康生さんの存在がなければ『ルパン三世』のアニメ化は実現せず、「ルパン三世の愛車=フィアット 500F」のイメージが定着することもなかったでしょう。やはり「アニメ界のレジェンド」が作り上げた功績は大きかったと言えるのではないでしょうか。
【了】
Writer: 山崎 龍(乗り物系ライター)
自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、カワサキZX-9R、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか
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