屈指の「ロングノーズ新幹線」500系のスゴさとは?尖っているのは鼻だけじゃない!カリスマ的人気を誇る異端車の経歴を振り返る
スターの個性が皮肉にも…
それまでの新幹線のイメージを覆すような500系の外観は、世間からも大きな注目を集めました。1997(平成9)年3月22日のダイヤ改正で、山陽新幹線の「のぞみ」としてデビュー、そして11月29日には東海道新幹線への乗り入れも始まり、東京~博多間を最速4時間49分で結んだのです。
東京6時00分発の1番列車、博多行き「のぞみ1号」に充当されていたのも、その存在を特別なものにしていたと言えるでしょう。
東海道・山陽新幹線のスター的存在となった500系新幹線でしたが、2008(平成20)年12月からは8両化のうえ山陽新幹線の「こだま」にも充当されます。そしてデビューから13年を迎える直前の2010(平成22)年2月末で「のぞみ」から引退しました。
高密度で大量輸送を行う交通機関に成長した東海道新幹線では、使う車両の共通化は命題でもありました。例えばダイヤが乱れた際などに、車両の座席やドアの位置・数が同じであれば、すぐに他の列車に使えます。しかし、500系はこれらを満たせず、その個性が皮肉にも「のぞみ」引退への大きな要因となったのでした。
現在、500系は山陽新幹線内の「こだま」に充当されており、「のぞみ」時代とは一味違った活躍が人気を集めています。
8号車の先頭部には「お子様運転台」を設置して、ファミリー層も楽しめる空間が作られています。また、6編成あるうちのV2編成はこれまで「カンセンジャー」「プラレールカー」「500 TYPE EVA」としてコラボし、現在は「ハローキティ新幹線」での運行を続けています。
初の300km/h走行でビジネス需要を中心に支え、現在は各駅停車の「こだま」としてローカル運用に専念する500系。デビュー当時には考えられなかった活躍の振れ幅も、個性あふれる500系ならではと言えるのかもしれません。
【了】
Writer: 和田 稔(鉄道ライター)
幼少期、祖父に連れられJR越後線を眺める日々を過ごし鉄道好きに。会社員を経て、現在はフリーの鉄道ライターとして活動中。 鉄道誌『J train』(イカロス出版)などに寄稿、機関車・貨物列車を主軸としつつ、信号設備や配線、運行形態などの意味合いも探究する。多数の本とNゲージで部屋が埋め尽くされている。
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