「穴がもっと欲しい」橋の“壁”はもはや壁じゃない! コンクリートのカタマリ内部が穴だらけになっているワケ
橋の「壁」の内部が大きく変わっているようです。これまではコンクリートのカタマリでしたが、求められる機能が増えた結果、内部にいくつもの「穴」が設けられるようになっています。
え、壁の中ってコンクリートのほかにも入ってたの?
2024年9月26、27日に都内で行われた「ハイウェイテクノフェア2024」では、高速道路の「壁高欄(かべこうらん)」に関する新技術も公開されました。壁高欄は、橋から人や車の落下を防止するために設けられる、道路の両端の“壁”です。
コンクリート関連事業を行うベルテクスコーポレーションのブースでは、熊谷組と共同で開発した、高速道路の更新工事に適用可能な「スライドジョイント壁高欄」が初公開されていました。
この壁高欄は、ひとつのブロックの内部に横方向の鋼製管が複数埋め込まれています。鋼製管は主に“連結用”。隣のブロックと位置を合わせた後、バール等でスライドさせ、無収縮モルタル(セメントペーストに骨材の砂と水を混ぜたもの)を流し込むことで、その場に固定できる壁高欄とのこと。なお、下面には床版(道路の床板)との接続用に鉄筋が組み込まれています。
ブースの担当者は「現場で型枠を組んでコンクリートを流す“現場打ち”や固定が不要で、モルタルを流すだけでいいのが特徴です。横の接続も、筒を入れてスライドさせるだけと簡単になっています」と話します。従来モデルと比べて現場作業の負担を削減し、工期の短縮やコストダウンが可能になるとのことです。
実はこの壁高欄に関してはもうひとつ大きな改良点があります。それは通信用のケーブルなどを通すことになる管の数を大幅に増やしたことです、「『通信管をどうしても入れたい』という要望が増えて、今まで2か3本でよかったものを、今回は6本も通しているんですよ」と担当者は明かします。
橋には地中に通信ケーブル類を埋め込むことができないため、壁高欄内部にケーブルを通すことになることが多いそうですが、最近は道路の環境維持などでもIT技術を活用することが増えており、必要なケーブルの本数も多くなっているそうです。「本当は(情報ケーブル用の管は)がない方が強度も出て造りやすいのですが」とのことでした。
とはいえ、NEXCOの衝突試験などの基準はもちろんクリアしており、「普通の衝突ではほとんどありえない、クルマが垂直に高欄にぶつかる荷重で衝突試験をやって、問題はないという結果が出ています。戦車でも突っ込んでこない限りはケーブルを傷つけない構造になっています」と、要望にはしっかり答えつつ、強度は両立させたとのことでした。
【了】
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